研究課題/領域番号 |
23K09037
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
國方 彦志 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (40361092)
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研究分担者 |
俵山 寛司 東北大学, 医学系研究科, 助教 (20402414)
中澤 徹 東北大学, 医学系研究科, 教授 (30361075)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
酸化ストレスは、毛細血管形態を変化させ、眼疾患を発症する可能性が高い。よって、DMRについて、毛細血管スコープSC-10を用いて、爪床毛細血管(NC)評価を行った。その結果、DM患者ではDR重症度が高くなるにつれて、NCの構造的変化が強くなる傾向がパラメータとして明瞭に捉えられ、NCパラメータはDRと増殖DRの識別能を有していた。また、全身因子もDRおよび増殖DRの存在と関係していたが、その全身所見にNC lengthを加えるとDRの識別能をさらに有意に改善させることが明らかになった。今回の研究から、NCはDRと関係が深く、既知のDR全身リスクを補完し高精度にDRリスクを予測することを可能とするため、NC測定は非侵襲的で簡便な検査方法になり得ると考えられた。また、近視性脈絡膜新生血管(mCNV)も失明に関わる眼疾患であるため、潜在的抗酸化能BAP/dROM比(B/d比)を算出し、mCNVとの関連を検討した。その結果、d-ROMは、女性において有意に高値であった。強度近視群とmCNV群の比較では、BAPとB/d比はともにmCNV群で有意に低値であった。多変量ロジスティック回帰解析では、BAPとB/d比はともにmCNVに有意に関連し、B/d比はより小さいオッズ比を示した。mCNV群のみで行った重回帰分析では、B/d比のみ中心窩下脈絡膜厚(SFCT)と有意な関連を示した。潜在的抗酸化能B/d比は、強度近視におけるmCNVリスク評価に有用である可能性が示唆された。さらに、網膜細胞実験を行い、GSSSGは網膜グリア細胞における炎症性サイトカインの発現を抑制することにより、炎症に関連した眼疾患の発症を予防する可能性があることを論文報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
網膜細胞実験を行い、GSSSGは網膜グリア細胞における炎症性サイトカインの発現を抑制することにより、炎症に関連した眼疾患の発症を予防する可能性があることを論文報告した。さらに、本研究課題がフォーカスする酸化ストレスは、NC形態を変化させ、眼疾患を発症する可能性が高いと考えられるため、実際のDMRについて、毛細血管スコープSC-10を用いて、爪床毛細血管評価を行った。DM患者ではDR重症度が高くなるにつれて、NCの構造的変化が強くなる傾向がパラメータとして明瞭に捉えられ、NCパラメータはDRの識別能を有し、さらに全身因子もDRと関係していたが、その全身所見にNC lengthを加えるとDRの識別能をさらに有意に改善させることが明らかになった。また、mCNVも失明原因上位の眼疾患であるため、潜在的抗酸化能B/d比を算出し、mCNVとの関連を検討したところ、強度近視群とmCNV群の比較では、BAPとB/d比はともにmCNV群で有意に低値、多変量ロジスティック回帰解析では、BAPとB/d比はともにmCNVに有意に関連し、B/d比はより小さいオッズ比を示した。mCNV群のみで行った重回帰分析では、B/d比のみSFCTと有意な関連を示した。潜在的抗酸化能B/d比は、強度近視におけるmCNVリスク評価に有用である可能性が示唆された。以上のように、様々な網膜疾患と酸化ストレスの関与が臨床的にも明らかになった。 活性イオウ分子種は構造的に不安定であり、生体内において比較的高濃度に存在するGSSSGについては、国内外のどのサプライヤーにおいても市販化されていない。GSSSGをさらに取得し実験の継続を可能とするべく、現在、提携企業において継続的なMTAを結び安定的に多量の高純度品を獲得できる体制を構築中である。
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今後の研究の推進方策 |
網膜疾患、緑内障などの眼疾患でヒト生体内の酸化ストレス測定を継続し、病態解明に繋がる新知見の取得を継続する。また、活性イオウ分子種は構造的に不安定であり、かつては生合成経路も未同定であったが、その合成経路も現在明らかになりつつある。今後、細胞内でGSSSGを強制発現させる眼疾患動物モデルでのRGC死抑制効果について検証する予定である。具体的には、NMDA眼内投与や視神経挫滅などの緑内障モデル動物を用い、cystathionine-γ-lyase (CSE) またはcystathionine-β-synthase (CBS)発現アデノ随伴ウイルス(AAV)を、マウスの硝子体に投与することでRGCにおいてCBSまたはCSEを恒常的に発現させ細胞内のGSSSG濃度を高め、RGC死に対する抑制効果を調べる予定である。これを可能とするため、AAVとマウスの取得準備を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
様々な網膜疾患と酸化ストレスの関与が臨床的にも明らかにあった。次年度は、加齢に伴い緩徐に高眼圧性RGC死を呈するDBA2系統マウスを実験対象とし、CSE発現アデノ随伴ウイルスを硝子体投与することで、RGCにおいてCSEを恒常的に発現させたのち、高眼圧性RGC死に対する抑制効果を調べるため。 さらに現在、提携企業において継続的なMTAを結び安定的に多量の高純度品を獲得できる体制を構築中である。
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