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2023 年度 実施状況報告書

次世代ハイブリット型全層角膜の作製と保存方法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 23K09047
研究機関長崎大学

研究代表者

上松 聖典  長崎大学, 病院(医学系), 講師 (30380843)

研究分担者 草野 真央  長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (00437849)
ヤッセル ヘルミー  長崎大学, 病院(医学系), 助教 (40747945)
井上 大輔  長崎大学, 病院(医学系), 助教 (60622610)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2027-03-31
キーワード角膜移植 / 再生医療 / iPS細胞 / 保存容器 / 保存液
研究実績の概要

近年、人工多能性幹細胞(iPS)細胞から角膜上皮細胞を誘導し移植する再生治療法が報告され、研究レベルであるが、角膜内皮への分化誘導についても報告されている。全層角膜移植術は現在も多く施行されているが、現状では、ドナーの特性や保存状況により角膜上皮や内皮細胞の質にばらつきがあるため一様に高品質の角膜移植片を提供することは難しい。そこで本研究では全ての患者に高品質の角膜移植片を提供することを目的に、再生医療を応用した「次世代ハイブリッド型全層角膜」の作製と保存方法を開発したい。
特に長崎アイバンクでは角膜内皮細胞密度が少ないドナー角膜を多く凍結保存しており、将来的にそれらの凍結保存角膜の角膜実質に質の高い上皮と内皮を播種させ、角膜移植を行うことができるようになる可能性がある。現在日本では角膜のドナーが不足しており、輸入角膜を試用せざるを得ない地域が多く、今回の研究によりこの状況を改善させたいと考えている。
本年度は角膜上皮および内皮細胞の脱細胞化、上皮細胞の播種、保存方法の開発を主に予定であったが、おおむね予定に沿って研究を進めることができている。脱細胞化については凍結解凍による細胞活性がほぼ失われることが確認された。この凍結処理した角膜グラフトにiPS細胞から作成した角膜上皮細胞や、実験動物由来の角膜上皮細胞を播種される研究を現在行った。さらに角膜上皮細胞の評価法や、関連した症例の病理解析もおこなった。来年度はさらに状態の良い角膜上皮を形成するための条件を研究し、内皮細胞の播種の研究も解する予定である。保存方法としてはより角膜上皮細胞の増殖能を保つことができる保存方法を開発し、その有用性が確認できた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

脱細胞化については凍結により角膜上皮および内皮細胞の活性がほぼ失われることを確認した。脱細胞化した後の角膜実質の品質については、臨床においてすでに一般診療として行われている凍結後のドナー角膜が有用であったことを確認し、症例報告を行った。(Kusano et al. Medicina 2023)さらに重症角膜実質融解の症例に、本研究で使用する凍結角膜の移植が有用であることを確認し、現在その病理を解明している。
現在凍結処理した移植用角膜グラフトにiPS由来の角膜上皮や実験動物由来の角膜上皮細胞を播種する研究を行っている。細胞の播種と共に、一度角膜上皮シートを作製し、それを直接角膜グラフトに移植する手段も行っており、現在も上皮細胞播種のさらに優れた条件の検討を継続しているところである。また、移植した上皮の健常性を評価するための新たな電気抵抗値測定法を開発した。(Yasser, et al, ARVO meeting 2023)
またこのハイブリッド全層角膜の保存方法として上皮と内皮を異なる条件で保存する方法を開発しており、その有用性を検証した。この保存方法を用いることで、上皮に適した保存液と内皮に適した保存液の2種類の保存液を角膜の前後に用いることができるため、より上皮細胞と内皮細胞の活性を保つことができる。上皮についてはその増殖能を従来の保存方法よりも有意に増殖能を保つ保存方法ががあることを確認した。(Tang, et al. Sci Rep. 2023)

今後の研究の推進方策

脱細胞化について、凍結角膜の上皮細胞がわずかではあるが増殖活性を残しているようであり、グラフトの脱細胞化をより確実に行う方法を模索している。研究用ヒト角膜を冷凍、スクラッチ、UV照射、ディスパーゼ処理、トリプシンEDTA処理、界面活性剤処理、機械的振盪法などを組み合わせ、より優れた脱細胞化を模索する。移植用角膜グラフトにiPS角膜上皮を播種するより優れた条件を検討しており、あらかじめ細胞シートにしたものをグラフトに張り付ける実験において、より高品質な上皮シートの作成条件を追加して研究する。保存容器については内皮側の培地を灌流する装置を追加し、内皮細胞の播種および保存を行っていく。質の高いハイブリッド全層角膜が作製できたら、ウサギの角膜に移植し経過を観察する。

次年度使用額が生じた理由

本年度の支出はほぼ予定通りであった。残額は28,553円であり、必要物品は購入するには少額であったため使用できなかった。翌年度の物品購入に充てる予定である。

備考

新しい上皮と内皮を別の条件で保存する容器を用いて、アメリカから輸入する移植用角膜の品質を改善できないか、ボストン大学と共同研究を行っている。またこの容器を用いて角膜上皮の生理機能などの研究も行う予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] ボストン大学(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      ボストン大学
  • [雑誌論文] Comparison of rabbit corneal changes during different preservation techniques using optisol-GS and airlift2023

    • 著者名/発表者名
      Tang Diya, Uematsu Masafumi, Harada Kohei, Mohamed Yasser Helmy, Kusano Mao, Inoue Daisuke, Kitaoka Takashi
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 13 ページ: -

    • DOI

      10.1038/s41598-023-34039-5

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Whole Corneal Descemetocele2023

    • 著者名/発表者名
      Kusano Mao, Mohamed Yasser Helmy, Uematsu Masafumi, Inoue Daisuke, Harada Kohei, Tang Diya, Kitaoka Takashi
    • 雑誌名

      Medicina

      巻: 59 ページ: 1780~1780

    • DOI

      10.3390/medicina59101780

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] A novel technique for corneal trans-epithelial electrical resistance measurement in mice2023

    • 著者名/発表者名
      Yasser Helmy Mohamed, Masafumi Uematsu, Mao Kusano, Kohei Harada, Diya Tang, Takashi Kitaoka
    • 学会等名
      The ARVO Annual Meeting 2024
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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