研究課題
2022年度は、不死化したヒト脱落乳歯歯髄幹細胞の培養上清(SHED-CM)のマウスメラノーマのメラニン生成抑制効果について検討を行った。①SHED-CMのメラニン生成抑制効果:マウスメラノーマとしてB16F1とB16F10を用いた。まず、SHED-CMによるメラニン生成の抑制効果を調べるため、B16F1細胞をSHED-CMおよびコントロール培地、ポジコンとしてアルブチン共存下で72時間培養し、細胞を回収し遠心すると、SHED-CMの濃度を上げていくと沈渣の黒味が減ってきた。そこで、細胞を溶解後メラニン量を分光光度計で定量すると、アルブチンよりより強くSHED-CM濃度依存的に低下した。さらに、チロシナーゼ活性をL-DOPAを基質として測定すると、同様に、その活性がSHED-CMにより強く阻害された。同様な結果は、B16F10でも見られた。②SHED-CMによるメラニン生成抑制効果の作用機序:そこで、次に、作用機序を明らかにするため、SHED-CMで刺激24時間後にRNAを抽出し、RT-qPCRによるmRNA発現解析を行うと、チロシナーゼmRNAが強く発現低下し、そのシグナル伝達系の上流に位置するTyrosinase-related protein-1/2(TRP1/2)や、小眼球症関連転写因子(MITF)、b-Catenin、GSK-3bの発現も低下していた。さらに刺激72時間後に細胞溶解液を調製し、ウエスタンブロット解析によっても、これらの分子の発現が低下、または、低下傾向にあった。つまり、SHED-CMは、チロシナーゼ発現を誘導するシグナルのかなり上流部分に効いている可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
不死化したヒト脱落乳歯歯髄幹細胞の培養上清(SHED-CM)によるメラニン生成抑制効果が明らかになってきているので、ほぼ計画の予定通り進んでいる。
2024年度:SHED-CMがメラニン生成を抑制する作用機序の検討SHED-CMによるメラニン生成の抑制効果の作用機序を明らかにするため、SHED-CMの抗体アレイを用いた網羅解析や個別のELISAにより、個々のサイトカインや増殖因子の濃度が高そうな分子や、以前にメラニン生成抑制活性を示すことが報告されている分子の組換え蛋白質をB16F1細胞に加え、メラニン生成への影響を調べる。次に、メラニン生成を抑制する活性が強かった分子について、その中和抗体とコントロール抗体、または、そのsiRNAを遺伝子導入し産生をノックダウンしたSHED-CMとコントロールsiRNAを同様に処理したSHED-CMなどを比較検討し、メラニン生成抑制に重要な分子を明らかにする。2025年度:紫外線照射で誘導する色素沈着モデルマウスでのSHED-CMによる色素沈着抑制効果の検討紫外線照射したマウスで誘導する色素沈着モデルマウスを用いて、in vivoでの色素沈着形成へのSHED-CMの抑制効果について検討する。C57BL/6マウス背部の毛をバリカンと除毛剤で除去後、紫外線照射を3回照射し、毎日SHED-CMおよびコントロール培地を染み込ませたガーゼを背中の張り、経時的に皮膚が黒色化する様子を写真で撮影し、色素沈着の程度を画像解析ソフトを用いて定量する。3週間後に皮膚組織のメラニンをFontana-Masson染色や、MITFやチロシナーゼ、TRP1/2に対する抗体を用いた免疫蛍光染色と、皮膚組織よりトータルRNAを調製し、それらの分子のRT-qPCR解析を行う。昨年までの検討で得られた重要な分子の抗体を用いて除去したSHED-CMを調製し、上述のマウスに投与し、in vivoでの関与を検討する。
使用金額の端数を合わせることができなかったため、次年度使用が生じた。残金は、次年度の消耗品代に加えて使用する計画である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (3件)
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