研究課題/領域番号 |
23K09099
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
太田 智之 岡山大学, 大学病院, 助教 (90869140)
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研究分担者 |
宝田 剛志 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (30377428)
高尾 知佳 岡山大学, 医歯薬学域, 講師 (40612429)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 培養軟骨 / iPS細胞 / グルタールアルデヒド / 細胞自己凝集 / 脱細胞化 |
研究実績の概要 |
本研究ではiPS細胞に由来する軟骨前駆細胞を用いて作製した培養軟骨に対し、脱細胞化もしくは細胞不活性化処理を行いヒト由来の細胞外マトリックス製剤を作製し移植素材としての応用可能性を検討することを目的としている。培養軟骨の創出に関してはiPS細胞より安定して軟骨前駆細胞を大量に調整する技術を確立しており、これに自己凝集化技術を用いることで数mm~数cm程度のリング形状の軟骨様組織を作成する技術を開発した。R5年度では細胞不活性化処理の予備的検討としてげっ歯類動物(マウスおよびラット)の肋軟骨に対してグルタールアルデヒドを用いた処理(GA処理)を行い、これをマウスの背部皮下に移植し検討を行った。GA処理ではサンプルを0.6%のGAに1日間浸漬し、その後0.2%のGAで1週間保管した後、80% EtOHで1日振盪し生理食塩水に1日浸漬した。同種無処理移植、同種GA処理移植、異種無処理移植、異種GA処理移植のサンプルを作成し、移植4か月後に組織を採取し標本をHE染色およびサフラニンO染色、コッサ染色を行った。HE染色、サフラニンO染色においてはいずれのサンプルにおいても移植軟骨の高度な吸収は認めなかったが異種無処理移植では軟骨膜の構造は破壊されていた。GA処理を行った2サンプルにおいて移植組織の組織構造は保たれていた。コッサ染色ではいずれのサンプルでも移植組織の石灰化は認めなかった。前述のGA処理法により移植後も軟骨の形態は安定的で、石灰化も惹起しないことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で使用するiPS細胞由来軟骨前駆細胞の調整、品質管理法は確立されており、細胞自己凝集化技術を用いた三次元培養法についても開発済みである。本年度はげっ歯類動物の肋軟骨を用いてGA処理法の開発を行い、生体移植を行うことでその評価を行った。GA処理の問題点である石灰化に関して高濃度エタノール処理を行うことで対処し、4か月という限定的な期間ではあるが生体内で安定的であることが確認された。一方でGA処理に伴う異物反応に関しての評価は行えておらず、今後詳細な検討が必要と考える。以上より予定していたげっ歯類動物肋軟骨の処理法の開発および移植に関してはおおむね予定通りの進展状況と考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はげっ歯類動物を用いてGA処理法の開発を行ったが、来年度以降では生体内での安定性についてより詳細な知見を得るために異物反応に関する評価やより長期の移植が必要と考える。またGAはタンパク架橋を行うことで細胞を不活性化し細胞外基質の強度を高める目的で使用しているが、ゲニピンなどより毒性の低いタンパク架橋剤を用いての検討も行う。加えてiPS細胞由来軟骨前駆細胞より作製した三次元培養軟骨に対してこれらのタンパク架橋処理を行った際の組織学的変化や機械的強度の変化、生体内での安定性についても検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度予定していた検討はおおむね予定通りに進行しているが、想定していたより少ない試行回数で目標を達成できたため次年度繰越金が生じた。次年度以降で免疫組織学検討や動物実験費用についてサンプル数を増やして検討を行う。
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