研究課題/領域番号 |
23K09144
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
黒澤 実愛 昭和大学, 歯学部, 助教 (70815802)
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研究分担者 |
森崎 弘史 昭和大学, 歯学部, 講師 (30317581)
桑田 啓貴 昭和大学, 歯学部, 教授 (60380523)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 唾液腺 / 口腔内細菌叢 |
研究実績の概要 |
宿主の口腔や腸内には多くの細菌が局在し、宿主との共生関係にある。特に腸内ではパイエル板を介して腸内細菌が免疫応答を誘導する一方で、粘液に多く分泌されるIgAは病原体を排除し、共生細菌の定着を誘導している。口腔内細菌叢はIgAを初めとした宿主の免疫細胞と共生関係にある。口腔内では唾液腺からIgAを初めとした抗菌成分が産生され、口腔内細菌叢の安定に寄与している。しかし、口腔内は外界と接していることから多くの抗原に曝露されるが、口腔内細菌に対する唾液腺内での免疫応答は不明である。そのため、本研究では上顎臼歯間を結紮することで歯周炎誘導モデルマウス(Ligatureマウス)を作成し、口腔内細菌叢が乱れた状態(ディスバイオシス)を誘導した。その結果、Ligatureマウスの歯周組織では炎症病変と歯槽骨の吸収が見られ、Entrococcus科やStaphylococcus科の割合が増加した。また、Ligatureマウスの唾液腺では炎症所見は見られないがIgA+細胞が集積しており、コントロールマウスと比較して唾液中のIgA濃度が有意に上昇した。Ligatureマウスの腸内細菌叢においてもEntrococcus科やStaphylococcus科が増加していたが、大腸内のIgA+細胞はコントロールマウスと同等であった。口腔内細菌叢の影響を検討するために、Ligatureマウスと未処置のマウスを同居させることで未処置マウスにおける口腔内細菌叢のディスバイオシスを誘導した。その結果、Ligature未処置マウスでも唾液腺にIgA+細胞とマクロファージが集積していた。よって、口腔内細菌叢のディスバイオシスは腸管などの全身組織を介さず、唾液腺の免疫応答に関与する可能性が示唆された。この結果は、唾液腺の免疫応答制御の解明に寄与すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウス飼育室において空調管理の機械が故障した。そのため、飼育場所の再検討により口腔内細菌叢が安定せず、それに伴い唾液腺における免疫細胞への影響を検討するのに時間がかかったため。
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今後の研究の推進方策 |
口腔内細菌叢のディスバイオシスによって唾液腺内の免疫活性が誘導されることが示唆された。臼歯結紮処置により歯槽骨の吸収が起こるが、結紮を除去すると一週間ほどで歯周炎が抑制されることが報告されている。そのため、歯周炎の治癒過程において、唾液腺内での免疫応答の抑制と口腔内細菌叢による影響を検討する。また、Ligatureマウスの口腔内で増加したEntrococcus科およびStaphlococcus科に対する唾液腺のIgAにおける抗原特異性を検討する。さらに、口腔内細菌叢のディスバイオシスに対する唾液腺のIgA誘導メカニズムを詳細に検討するために、唾液腺内にCD20抗体を投与または唾液腺周囲のリンパ節を除去し、歯周炎を誘導することで唾液腺内にIgA産生細胞の誘導メカニズムを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
若手研究(20K18494)で使用する抗体や消耗品が本研究でも使用することが多く、若手研究の経費を使用したため次年度使用が生じた。Ligatureマウスの口腔細菌叢で増加したEntrococcus科とStaphlococcus科に対する唾液腺のIgA誘導メカニズムを検討する。 次年度使用額が生じた分は、上記の実験に使用する消耗品などに使用する予定。
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