研究課題/領域番号 |
23K09148
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
内田 文彦 筑波大学, 医学医療系, 講師 (70736008)
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研究分担者 |
岡田 浩介 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80757526)
新谷 智章 広島大学, 病院(歯), 講師 (90403518)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 歯周病 / NAFLD / PNPLA3 / 歯周病原細菌の血清抗体価 / 細菌叢解析 |
研究実績の概要 |
筑波大学附属病院肝臓生活習慣病外来に通院していた患者を対象に、歯周病の評価(PISA(歯周ポケット炎症面積(Periodontal Inflamed Surface Area; PISA, J Clin Periodontol 2008),一口腔単位での定量的な評価を行う) を算出し重症度を評価)ならびに唾液と血液のサンプリングを行った。血液検体から、PNPLA3のSNP解析を実施し、血清中の歯周病原細菌(P.g,A.a, T.d,T.f,E.c,F.n, P.i,P,n,C.r)に対するIgG抗体価を測定した。 欠測値が多い患者を除いた127例の解析を行った。 FAST scoreと歯周ポケットの深さや歯肉出血との関連が示されず、PISAと関連が認められたことから、歯周ポケットが存在するだけでなく、歯肉に炎症が生じ、潰瘍が形成されることにより、歯周病関連炎症因子が血液中に流入しやすくなると考えられた。従って、歯周病関連炎症因子の肝臓への到達には、歯周病の活動性が影響する可能性があることが明らかとなった。 60歳以上のサブクラス解析では、PNPLA3遺伝子多型を有する方が,肝臓の脂肪化・線維化が高度であったが、PISAに差はなかった。 この研究の結果から、60歳以上で肝病態におけるSNPsの影響を受けやすく、歯周病の病態が同程度の場合には、SNPsを有している患者の方が肝脂肪化or線維化が進行していると考えられた。SNPsを有しているとライフスタイルの変更で肝病態が改善しやすいという報告があるため、60歳以上のSNPsを有する患者においては歯周治療が奏功しやすい可能性があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
解析対象となるNAFLD患者の一定数の参加が得られた。60歳以上でのサブクラス解析では臨床的に意義のある結果が得られたが、全体での解析では得られていないため、さらに解析対象者を増やす必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
NAFLDの病態進行のマーカーとしてFAST scoreを用いた解析を行ったが、有意な差が見出せなかったため、今後は他の肝線維化マーカーを用いて解析を行う。 また、血清、唾液中リポ多糖結合タンパク質(LBP)の測定も行い、歯周病に関連する指標を増やし追加解析を行う。そして、対象となるNAFLD患者数を増やし、さらに歯周病原細菌の血清IgG抗体価を測定し、基本情報の比較を行う。 本年度では当初の予定でもあった唾液から抽出した核酸を用いた口腔内細菌叢の解析を行い、因子に関連する菌種を探索する。さらに機能予測解析も行うことで差がある菌種の役割を同定し、肝の脂肪化・線維化を進展させるメカニズムを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定より物品費及び試薬や消耗品に係る費用が少なく済んだことが理由である。そして、次年度に国際学会での招待講演で発表することとなったため、繰越金を旅費や学会参加費に充当させることとした。
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