研究課題/領域番号 |
23K09169
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
西藤 法子 広島大学, 病院(歯), 助教 (40735099)
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研究分担者 |
松尾 美樹 広島大学, 医系科学研究科(歯), 准教授 (20527048)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 根管内細菌培養検査 |
研究実績の概要 |
本研究では、アデノシン三リン酸(ATP)およびその副産物(ADP,AMP)を総称した総アデニレート(ATP+ADP+AMP:A3)を指標とした拭き取り検査(キッコーマンバイオケミファ, A3法)を歯内治療における根管内の無菌化を確認するための検査として応用することを目的としている。その結果、生菌の培養に依存しない迅速な根管内の無菌化の評価法の開発を目指す。 初年度は、in vitroの実験系において歯内感染で認められる菌種の基準株を用いてA3法の検出限界の確認を行なった。S. mutans、E. faecalisを用いて滅菌生理食塩水で段階希釈した菌液を平板塗抹法、A3法および定量PCRで測定した。平板塗抹法-A3法ではどちらの菌種も右肩上りの検量線が得られ、A3法の検出限界は数百個と予測された。平板塗抹法-定量PCRの結果から検量線を作成し、臨床データに対応させる準備を行なった。臨床データの収集として、感染根管治療を行なった患者の治療前と根管充填前の根管内に注入した滅菌生理食塩水で試料採取を開始した(広島大学倫理審査委員会E2023-0060)。A3法の試料採取法は未確立であったため、複数の方法でA3法用の試料採取を試みた。その結果、診療時に行う根管内細菌培養検査と同様の手法が最も安定して試料採取が可能であると判明した。治療前の試料は感染根管治療開始時に根管充填材を除去後、薬液で洗浄する前の根管内から採取したため、根尖部からの排膿や穿通の有無によってA3値に大きな差が生じた。また、根管充填前の細菌培養検査で陰性であった試料においてA3値が高値を示した症例が存在した。 次年度以降はin vitro実験系において他の菌種の検量線の作成、臨床データの収集方法の精査と確立を行なった上で、データ量の獲得と解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、試料採取の方法の確立のために、単独で試料採取を行なっている。並行して行ってる臨床研究もあり対象となる症例数が限られること、予約状況によって根管充填前の試料の採取までに時間を要することから臨床データの収集に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、in vitroの実験系において平板塗抹法-A3法の検量線を、他の菌種(グラム陽性桿菌、グラム陰性桿菌)においても作成する。また、感染根管内には根尖部から侵入した歯根膜細胞や血液などのヒト細胞も存在することがある。血液のA3値は既知の事実として高値であるため、ヒト歯根膜細胞のA3値の検量線も作成する。100 mm dishに播種した細胞を懸濁させた滅菌生理食塩水に対してA3法を行う予定である。 本年度、いくつかの臨床データを採取した結果、治療前のサンプリング、根管充填前のサンプリングのそれぞれで検討課題を得た。感染根管治療前のサンプリングにおいては、サンプル中のA3値は症例によって数値が大幅に異なる点である。術前のサンプル採取は感染根管治療開始日とし、薬液洗浄前の根管内に滅菌生理食塩水を入れて採取した。しかし、根管充填材料の有無や穿通の有無など症例に応じて行なっていた。そのため、現存のサンプルデータをもとによりタイミングや条件を決めていく。また、根管充填前のサンプリング時においては、根管内細菌培養検査で陰性を示した試料において、A3値が高値を示すサンプルが存在したことである。原因として、根尖部からの出血が最も考えられるが、根管充填前の根管乾燥時に使用したペーパーポイントで根尖部から出血があったかどうかの情報は得ていないのが現状である。そのため、今後は根管乾燥時の出血の有無をA3値と共に記録していく。 以上の研究計画のもと、次年度は本研究の経過を学会で発表したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度以前に、本研究で使用する機器や材料を一部購入することができたこと、研究で使用する試薬などを共有していることから予定より出費を抑えることができた。 本年度は臨床データを、研究責任者単独で採取していたため、予定よりもサンプル数を得ることができなかった。今後は、サンプル採取のタイミング、条件を固定することで所属している他の研究者にもサンプル提供の協力を依頼する予定である。そのため、A3法の消耗品は本年度よりも大幅に増えることが予想される。
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