研究課題/領域番号 |
23K09187
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
武市 収 日本大学, 歯学部, 教授 (10277460)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 難治性根尖性歯周炎 / 歯根肉芽種 / エプスタインーバーウイルス / 骨吸収性サイトカイン / 酪酸 / BZLF-1 / 歯周病原菌 / ルシフェラーゼアッセイ |
研究実績の概要 |
難治性根尖性歯周炎患者50名から根尖病変組織を採取した。直ちに3分割し,一方はホルマリン固定したのち,パラフィン切片を作製し,ヘマトキシリン‐エオジン染色を行った。病理組織学的に歯根肉芽種と診断した40例を本実験に供試した。また,他方はそれぞれ,DNAおよびRNAの抽出に使用した。完全埋伏智歯抜去時に除去した歯肉組織5例を健常のコントロールとし,病変組織と同様に処理した。なお,本研究は日本大学歯学部倫理委員会の承認(EP21D012)の下で実施した。 DNAを用いてreal-time PCR法を行い,エプスタイン-バー ウイルス(EBV)DNAおよび根尖性歯周炎関連細菌であるPseudoramibacter alactolyticus の検出を行った。また,RNAを用いて相補的DNAを作製したのち,real-time PCR法によりBZLF-1 mRNAの発現量を定量した。 P. alactolyticusの培養上清中の短鎖脂肪酸量を,高速液体クロマトグラフィーを用いて定量的に検出した。検出した酪酸量を参考に,BZLF-1遺伝子を導入したルシフェラーゼベクターを使用し,ルシフェラーゼアッセイを行った。 その結果,歯根肉芽種40例全てにEBV DNAおよびP. alactolyticus DNAを確認した。しかし,健常歯肉組織からは全く検出されなかった。歯根肉芽種中のBZLF-1 mRNA発現を全症例で確認したが,健常歯肉組織からは検出されなかった。P. alactolyticusの培養上清中の酪酸量は3.58 mMであった。そこで,酪酸量1.0および1.5mMとなるよう培養上清量を調整し,ルシフェラーゼアッセイを行ったところ,標準品の酪酸1.0および1. 5mMを使用した際の結果と同程度のルシフェラーゼ活性を示した。すなわち,P. alactolyticusは酪酸を産生し,潜伏感染したEBVを再活性化する可能性を示唆するものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は病理組織学的および分子生物学的検索法を用いて実施された。申請者は長年に渡ってこれらの研究手法を実施しており,そのテクニックや注意すべき点を理解しているなど,研究手法に精通している。また,本研究の供試試料を当初の予定よりも多く採取できたため,解析結果も十分得ることができた。 以上のことから,おおむね順調に進展しているものと思われる。今後2年かけて,100~150例の試料を採取したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は,根尖病変中にエプスタイン-バー ウイルス(EBV)およびPseudoramibacter alactolyticus が感染していることを確認した。また,根尖病変中にBZLF-1 mRNA発現を確認したことから,潜伏感染したEBVが再活性化していることが示唆された。 そこで令和6年度は,再活性化したEBVがサイトカイン発現および破骨細胞への分化を誘導するRANKL発現を誘導する可能性について検索することとする。また,根尖病変および健常歯肉組織を継続して採取し,検索試料数の増加を図る。 RANKL mRNA発現を確認したが,そのタンパク発現は確認していない。そこで,試料のパラフィン切片を用いて免疫組織化学的染色を行い,ZEBRAタンパクの発現細胞の局在を検索することとする。また,歯根肉芽種から抽出したRNAを使用し,インターロイキン1(IL-)β,IL-6およびRANKLのmRNA発現量をreal-time PCR法で定量的に検出する。加えて,ZEBRAとIL-1β,IL-6またはRANKLの蛍光二重免疫染色法を行い,これらの共発現を検索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
根尖病変歯肉からRNAまたはDNAを抽出する試薬などを購入した際,予定されていた金額よりも値引きされたために,余剰金が発生した。 令和6年度では,根尖病変歯肉からRNAまたはDNAを抽出する試薬などを購入するために使用する予定である。
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