研究課題/領域番号 |
23K09195
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
柿野 聡子 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 講師 (30516307)
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研究分担者 |
松浦 祐司 東北大学, 医工学研究科, 教授 (10241530)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 歯髄診断 / 透過型光電脈波法 / 歯髄血流測定 / 発光ダイオード / 歯の光学特性 |
研究実績の概要 |
歯髄は血管や神経、リンパ管などから構成され、歯に栄養を供給する組織である。歯髄の病態診断は、歯科治療における治療方針の決定、歯髄保存の可否において重要な判断材料となるため、正確な診断が求められる。これまでの研究より、外傷に遭遇する頻度の高い永久前歯と乳前歯に対し、LED(Light emitting diode)の透過光を利用した透過型光電脈波測定(歯髄血流測定)により歯髄の生活反応を非侵襲的、客観的に診断できるようになった。一方で、小臼歯や大臼歯の測定システムは確立していない。臼歯歯髄の光電脈波測定が可能となれば、齲蝕や歯周炎、歯内歯周病変に対して、従来の診査法との併用によって高い精度での歯髄診断が可能となる。本研究では全ての歯種において歯髄血流測定が可能な歯髄診断システムの構築を最終目的とし、本研究課題では歯と血液の光伝搬の理論解析をもとに歯種ごとの適正波長を選定し、全歯種で歯髄血流測定を可能にするための光学測定の最適条件を目指している。 本研究では、①歯髄硬組織と歯髄血液内の光伝播解析、②抜去歯光計測による適正波長の検討、③ヒトの光計測を目標とした。初年度の2023年度は、前歯および小臼歯の抜去歯モデルを用いた歯と血液の光学測定を行ったところ(②)、前歯の適正波長が525nmであるのに対し、小臼歯の適正波長は590nmであることが明らかになった。さらに、②の結果をもとに、前歯と小臼歯に関して歯の中の光伝播の数値計算(光学シミュレーション)を行ったところ(①)、前歯と小臼歯においては抜去歯モデルの実測値と数値計算の結果が概ね一致した。結果より、歯の中の光伝播には歯髄腔内血液濃度、歯の解剖学的構造の違い、LED光波長が密接に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抜去歯の光計測による適正波長の検討、および光学シミュレーションに関して、前歯と小臼歯については順調に進んでいる。しかし、大臼歯については歯全体が厚く、さらに光の照射・受光位置と歯髄腔の解剖学的位置関係が歯髄を経由する透過光の取得に不利であることが明らかになったため、引き続き検討を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、①歯の硬組織と歯髄血液内の光伝播解析、②抜去歯光計測による適正波長の検討、③ヒトの光計測を目標としており、初年度の2023年度は前歯と小臼歯について、①と②が概ね終了している。引き続き、歯髄腔体積の違いについて抜去歯モデルを使用した光学測定および光学シミュレーションを行うことで、歯の解剖学的個体差の影響について検証を行う。また、歯髄血液酸素飽和度の透過光への影響を調べるため、酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの吸光度の異なる非等吸収波長、660nmを用いて実験および光学シミュレーションを行う。さらに、ヒトの前歯と小臼歯で歯髄脈波測定が可能かどうか検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた光学設計ソフトウェアの試用により、シミュレーションが困難であることが分かったため、購入しなかった。代わりにKubelkaのTwo-flux modelを使用したが、解析ソフトを必要としないため費用が発生せず、次年度使用額が生じた。しかし、光伝播の観察を行うための実体顕微鏡用カメラや、血液ガス分析装置のセンサーカードの購入が必要となるため、次年度使用額を使用する予定である。
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