研究課題/領域番号 |
23K09207
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
柴田 直樹 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (60291770)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | AI / 画像診断支援 / パノラマエックス線画像 / 根尖性歯周炎 |
研究実績の概要 |
根尖性歯周炎(AP)は、パノラマエックス線(PAN)検査による検出が困難なため、実際には見落とされているケースが少なくない。本研究では、PAN検査によるAPの画像診断に対し、人工知能(Artificial Intelligence:AI)の一手法である深層学習(Deep Learning:DL)を応用することにより、APを自動検出する新たな画像診断法の確立を試みる。 さらに、診療経験年数の異なる複数の歯科医師グループの読影結果と比較することにより、AIによるAPの画像診断支援(Computer-Aided Diagnosis:CAD)としての有効性を検証する。 2023年度の実施状況として、様々な臨床的理由からCBCTまたはCT検査を実施した症例のうち、同時期にPAN検査を行った症例からPAN画像を抽出した。それらをCBCTまたはCTと照合し、いずれかの部位にAPの存在が確定したPAN 画像685枚を選定した。次に、それらをトレーニングデータ585枚およびテストデータ100枚に振り分け、トレーニングデータ585枚に対し、アノテーションツールを用いてAPを含んだ矩形領域を設定してラベル付けを行い、その座標データを得た。DLにはネットワーク:YOLOv7、フレームワーク:Pytorchを用い、ラベルの作成で得られたトレーニングデータセットの座標データの学習を行った後、テストデータのAP検出を試みた。AIによるAPの診断精度は、すべての歯を対象として感度、適合度およびF値にて判定した。その結果、感度が0.607、適合度が0.810、F値が0.695であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度が開始する前の準備状況として、既に以下のことを行っていたことが理由である。 ・本研究に用いるPANデータの一部を抽出し終わっていた(当初は1,000症例の計画であったが、最終的には685症例に縮小する予定)。 ・抽出したPANデータのうちで、トレーニングデータに振り分けた画像に対し、アノテーションツールを用いてラベル付けを行い、その座標データが得られていた。 ・以前にPAN画像を用いたAIによる垂直性歯根破折の画像診断に関する研究に従事したことにより、DLを実施するうえで必要不可欠となるデータセットのトレーニング、DLシステムの構築および評価法など、本申請課題で遂行予定の基本的手技および手法を修得することができていた。
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今後の研究の推進方策 |
テストデータと同一のPAN画像100枚を用いて、歯内治療科診療部所属で臨床経験25年以上の歯科医師3名と放射線・画像診断科診療部所属の歯科医師2名の合計5名のグループ、臨床経験25年以上の一般的な歯科医療に従事する開業歯科医師5名のグループ、および臨床経験1年以内の臨床研修歯科医師5名のグループがAPの有無を画像診断する。各歯科医師グループの診断精度は、AIによる学習モデルの診断と同様の方法を用いるが、AIと各歯科医師グループともに対象を①すべての歯、および②上下顎前歯、③上顎臼歯、④下顎臼歯の3ブロックに分類し、①から④をそれぞれ感度、適合度、F値を用いて評価し、AIと各歯科医師グループ間の結果を比較および分析する。これにより、診療経験年数や部位の違いによるCADとしての有効性の範囲および程度を詳細に検討する。
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