研究課題/領域番号 |
23K09224
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
上田 一彦 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 教授 (90386277)
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研究分担者 |
瀬戸 宗嗣 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 講師 (50769239)
鈴木 翔平 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 助教 (50878171)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | インプラント / ジルコニア / ねじり試験 / インプラント-アバットメント界面 / アバットメントスクリューの緩み |
研究実績の概要 |
現在,純チタン製,チタン合金製のインプラントが主に臨床応用されている.一方,チタンアレルギーをはじめとするチタンの毒性に関する報告が年々増加している.近年,日本国外ではチタンフリーのジルコニア製インプラントの臨床応用が開始されているが,ジルコニアインプラントに関する不具合や経時的変化については不明な点が多い. 本研究の目的は,口腔内で発生するねじり力を再現するねじり試験によりアバットメントに連続する左右回転方向の力を加え,ツーピース型ジルコニアインプラント使用時のアバットメントスクリューの緩みと,インプラントとアバットメントの経時的形態変化を観察することである. 実験で用いるインプラント体は純チタン製とジルコニア製の2種,アバットメントはインプラント-アバットメント接合部がチタン合金製のベース上にジルコニアを装着したハイブリッドタイプのアバットメントを用いる.アバットメントに装着するジルコニア部分は全てCAD/CAMにて同形状に製作し,本年度は実験試料の購入とアバットメントに装着するジルコニア製上部構造を設計するために各アバットメントのSTLデータを採取した.また,ねじり試験によるインプラント体,アバットメントおよびアバットメントスクリューの形態変化を評価するためにそれぞれをSTLデータ化し3D画像解析ソフトを用いて試験前後のデータをスーパーインポーズし,偏差カラーマップを作成しそれぞれの形態変化量を測定し数値化するためにマイクロCT撮影により取得したDICOMデータからSTLデータへ変換する方法について検討した.準備が整い次第ねじり試験機を用いた試験を行うことで,ジルコニアインプラント使用時の予後が予測可能となり,緩みや形態変化を起こしにくい新たなアバットメントスクリューの開発につながる創造性を併せ持つ非常に価値のある研究である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実験計画は令和5年度に1.材料購入2.ねじり試験前の各試料の形態観察3.ねじり試験機の調整,設定,キャリブレーションを行う予定であった.現在までの実験の進捗状況はおおむね順調であり,1.材料購入と3.ねじり試験機の調整,設定,キャリブレーションについては既に終了している.2.ねじり試験前の各試料の形態観察に関しては,使用するジルコニアインプラントが日本国内未発売のため,スイス連邦より輸入する必要があり,その際の購入,支払,医薬品の輸入手続きに時間を要したため,若干の遅れが生じている.また,当初,デスクトップスキャナーにより実験試料の形態観察を実施する予定であったが,細部再現性が乏しかったためマイクロC Tにより形態観察を行う事とした.それに伴い日本歯科大学所有のマイクロC Tを用いて実験試料の予備観察を実施した.最終的な形態観察は更なる詳細な精度の検証を行うために新潟県工業技術総合研究所下越技術支援センターのマイクロCTを用いて実施する予定である.形態観察終了後に当初の実験計画通りにねじり試験機を用いたねじり試験を行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今後の実験計画は,令和6年度に1.ねじり試験の実施,2.ねじり試験前後の実験試料の形態変化の評価,3.統計学的分析を行い,それらの結果をもとに令和7年度に論文作成を予定している.令和5年度に予定していたねじり試験前の各試料の形態観察についてはマイクロCT撮影により得られたデータ精度の検証後,速やかにねじり試験機を用いて試験速度10°/min.メーカーのアバットメントスクリュー規定締結トルク値の10%トルク制御とし,左右への反復回転方向に1.2×10^6サイクルで負荷を加える静的試験を行なう.実験後は実験前にメーカー指定締結トルク値で装着したアバットメントスクリューの緩み量の計測とねじり試験後のインプラント体,アバットメントおよびアバットメントスクリューの形態をマイクロC Tを用いてそれぞれの表面形状をS T Lデータ化し,3D解析ソフトを用いて試験前後の各実験試料の形態変化量を測定,数値化を行う.それぞれの算出された変化量を基に統計学的分析を行う予定である.また,ねじり試験後の各実験試料の接合界面には形態変化が生じる可能性があるため,走査型電子顕微鏡による表面観察を行う.実験結果については公益社団法人日本口腔インプラント学会学術大会にて発表後,英文誌に論文投稿を行うことでチタン製インプラントと比較したジルコニアインプラントの使用時に発生する事象を予測することが可能となり,患者の口腔関連QOL向上と維持を実現し社会貢献に寄与する事ができる非常に価値のある研究であると考える.
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次年度使用額が生じた理由 |
見積金額より購入金額が安価であったため次年度使用額が生じた.次年度使用額と当該年度以降分として請求した助成金は令和7年度に英語論文作成後の英文校正費に使用する.
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