研究課題/領域番号 |
23K09340
|
研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 泰生 岩手医科大学, 歯学部, 講師 (40244941)
|
研究分担者 |
入江 太朗 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (00317570)
衣斐 美歩 岩手医科大学, 歯学部, 特任講師 (30609665)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
キーワード | 亜鉛代謝 / 亜鉛ホメオスタシス / 亜鉛シグナル / 亜鉛トランスポーター / Zip10 / コンディショナル・ノックアウト・マウス / 顎骨炎症 / 巨核球・血小板分化 |
研究実績の概要 |
[顎骨の炎症と治癒の制御に亜鉛トランスポーターが直接関与することの全容解明] ①抜歯創の作製,投与薬剤の調整,検索材料の採取,病理組織学的解析 Zip10flox・Zip10-CreERT2マウスにタモキシフェンを投与した群と非投与群の上顎左右側第一臼歯を抜去後上顎骨を摘出した。正中で半割しEDTAにて脱灰し,通法に従いパラフィン切片を作製,さらに透明化標本(ScaleS法)を作製した。 ②巨核球・血小板の分化誘導 Zip10flox・Zip10-CreERT2マウスから骨髄組織を採取し,幹細胞因子(SCF)およびトロンボポエチン(TPO)を添加した培地で培養後,巨核球画分を分離し,タモキシフェン投与群と非投与群に分けて形態観察およびRT-qPCRにより,巨核球および血小板の分化の観察とZip10遺伝子発現の定量解析を行った。 その結果,タモキシフェン投与群では巨核球から血小板への分化が阻害され,Zip10の発現に大きな変化はみられなかった。一方,非投与群では血小板への分化が観察されZip10の発現は時間経過とともに減少することが示された。この結果から,巨核球から血小板への分化過程において,Zip10亜鉛トランスポーターが重要な役割を果たすことが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Zip10トランスポーターの役割を解明するための基礎データが集積されている。初年度の実験では,Zip10flox・Zip10-CreERT2マウスの作製とタモキシフェン投与条件の最適化が行われ,巨核球および血小板の分化過程におけるZip10の役割を明らかにするための実験が順調に進展している。実験データの収集と解析が進行中であり,形態観察および遺伝子発現解析の結果が得られた。しかし,データの最終的な解析に必要な量が不足しているため,さらなるデータ収集が必要である。現在,追加実験を計画し,データの補完を進めている。また,顎骨の炎症と治癒における亜鉛シグナルの詳細なメカニズムを解明するために,組織透明化標本の作製を継続し多重蛍光免疫染色の実験を開始している。
|
今後の研究の推進方策 |
令和6年度の研究実施計画 [亜鉛トランスポーター発現細胞の時空間的系譜追跡と亜鉛トランスポーター欠損の影響の証明] 抜歯創の各実験群から得られた組織切片および透明化標本について,多重蛍光免疫染色を施し,亜鉛トランスポーター発現細胞の系譜と亜鉛トランスポーター欠損の影響を血管形成および骨形成の推移と共に検証する。また,骨形成率と血管密度の計測を行い,亜鉛トランスポーター欠損による影響を詳細に解析する。次に,亜鉛トランスポーター欠損による巨核球・血小板の分化誘導への影響をリアルタイムRT-qPCRを用いて解析し,Zip10遺伝子および巨核球分化マーカーのItga2b, Gp1baなど関連遺伝子群の発現を定量する。これらの研究により,亜鉛シグナルを介した顎骨炎症および治癒のメカニズムを解明し,新たな治療戦略の構築を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画に必要なキーエンス オールインワン蛍光顕微鏡(BZ-700)は既に我々の研究室に設置済であり,このBZ-700用のオプションモジュールについてはキーエンスが短期間の無料貸し出しサービスを行っていたことから,各研究者が必要となった際に,それを利用する形で使用していた。しかし,キーエンスが同一研究者の多数回の無料貸し出しサービスを制限したことから,本研究に必要不可欠であるオプションモジュールの購入が不可欠となった。本オプションモジュールは研究遂行に必須であるため,前倒し支払請求を行った。年度末にこれらの承認が得られたため,その支出が次年度となってしまい次年度使用額が生じた状態である。
|