研究課題/領域番号 |
23K09354
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
原田 耕志 山口大学, 大学院医学系研究科, 講師 (60253217)
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研究分担者 |
田原 義朗 同志社大学, 理工学部, 准教授 (30638383)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | アミノ酸ゲル化剤 / 口腔粘膜炎 |
研究実績の概要 |
山口大学動物実験委員会の承認(承認番号55-024)を得た後、SCC7細胞をC3H/HeJJclマウスの背部皮下に移植してSCC7腫瘍を形成後に、5-FU(18mg/Kg/day)腹腔内投与下に、舌背部への酢酸(50%, 30秒間)塗布を行うことで口腔粘膜炎を作製した(International Garlic Symposium 24, ミュンヘン, 28th, April, 2024にて報告)。屠殺後肉眼的に舌背部に潰瘍を認め、その周囲は軽度発赤を認めた。さらに同部を切除後病理組織学的に検索した所、舌背部を中心に部分的には舌下面まで上皮欠損を認めた。同様にしてSCC7腫瘍を作製し、コントロール群、酢酸塗布群、5-FU投与+酢酸塗布群、5-FU投与+酢酸塗布+エレンタール投与群の4群に分け、各群4匹とし、治療効果を検討した所、エレンタール投与にて劇的に口腔粘膜炎が改善された。さらにエレンタールに加えてその主成分であるデキストリンとアミノ酸をそれぞれの含有比率で投与した所、エレンタールとアミノ酸は同程度に口腔粘膜炎を改善できた。次にエレンタールに含有されている18種類のアミノ酸のうち溶解可能なセリン、アルギニン、スレオニン、グリシン、リシン、システイン、アラニン、メチオニン、プロリン、バリンをそれぞれの含有比率で投与した所、プロリン投与群における口腔粘膜炎改善効果が最大であった。そこでイソプロパノール、水、カルボマー(ゲル化剤)、ジイソプロパノールアミン(pH調整剤)等を用いてプロリンゲル化剤を作成し、マウス口腔粘膜炎モデルを用いて口腔粘膜炎に対する有効性を検索した。その結果、5-FU投与+酢酸塗布群の口腔粘膜炎と比較して、300mMプロリンゲルでは効果はやや乏しいものの、500ー2000mMプロリンゲルの効果は顕著であり、2000mMプロリンゲルが最大の効果を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に翌年度行う予定であった口腔粘膜炎の発症や増悪の抑制につながるアミノ酸(プロリン)を同定でき、プロリンを含有させたアミノ酸含有ゲル化剤が作製でき、500ー2000mMプロリンゲルが顕著な口腔粘膜炎改善効果を発現すること、その中でも2000mMプロリンゲルが最大の効果を発現できることを明らかにできたことから、おおむね順調に研究が進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
安全に投与可能で口腔粘膜炎治療に有用なアミノ酸としてプロリンを同定できたため、プロリン投与マウスとプロリン非投与マウスの口腔粘膜炎部(舌部)、唾液腺を摘出し、それぞれ核酸を抽出後、両者の差異を、RNAシ-クエンシング、マイクロアレイ解析ならびにネットワーク解析を用いて検索し、プロリン投与が口腔粘膜炎の発症や増悪の抑制につながるメカニズム、唾液腺保護や唾液分泌維持につながるメカニズムをそれぞれ検討していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度にプロリン投与マウスとプロリン非投与マウスの口腔粘膜炎部(舌部)、唾液腺を摘出し、それぞれ核酸を抽出後、両者の差異を、RNAシ-クエンシング、マイクロアレイ解析ならびにネットワーク解析を用いて検索し、プロリン投与が口腔粘膜炎の発症や増悪の抑制につながるメカニズム、唾液腺保護や唾液分泌維持につながるメカニズムを検討する予定であったが、元来これらに使用する各種キットならびに試薬類は高価であるが、近年さらに価格が高騰しており、次年度に使用額の増加が余儀なくされたため、次年度に研究費を残さざるを得なかったため、次年度使用額が生じた。
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