研究課題/領域番号 |
23K09386
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
阿部 佳子 鶴見大学, 歯学部, 准教授 (30401334)
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研究分担者 |
河原 博 鶴見大学, 歯学部, 教授 (10186124)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 脳マイクロダイアリシス / 内因性疼痛抑制機構 / うつ病 / CPM |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,疼痛の変調の機序が未だ不明な点が多いうつ病に対し,内因性疼痛抑制機構の重要な構成要素であるConditioned Pain Modulation CPM,脳内ノルアドレナリン神経系および脳内セロトニン神経系の内因性疼痛抑制機構がもたらす痛みの変調や鎮痛の効果を,神経科学的研究方法である脳マイクロダイアリシス(微小透析法)を用いて高次脳機能の観点から明らかにすることである.脳マイクロダイアリシスは,脳内の目的とする部位に直接プローブを挿入し,透析によりプローブ内に流入してくるシナプス間隙に存在する神経伝達物質を含む灌流液を回収するため,極めて正確に灌流液サンプル中の神経科学物質を定量測定することができる. 今年度は,対照群となるラット(Wistarラット)を用いて,LC(青斑核)とRMg(大縫線核)へのプローブ挿入方法の確立を目指して実験を進めてきたが,RMgへのプローブ挿入が非常に困難な上,挿入後のラットの死亡率が高いことから,プローブ挿入をRMgからより大きな部位かつ表層に存在するPAG(中脳水道周囲灰白質)に変更したところ,正確にセロトニン・ドパミン・ノルアドレナリン・GABA・アミノ酸を定量測定することに成功した. 令和6年度に入り,ストレスの無い自由行動状態の時と,尾へのピンチ刺激およびによる機械的刺激および肢裏にvon Frey filaments(室町機械動物用Semmes-Weinstein monofilament set)での痛覚刺激を10分負荷した状態での神経伝達物質の変動を測定し始めた.この結果を令和6年8月の国際疼痛学会(アムステルダム)で発表予定となり,令和5年度末に抄録を提出し,発表することが受理された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は対照群となるラット(Wistarラット)を用いて,LCとRMg へのプローブ挿入方法の確立を目指して実験を進めてきた.LCとRMgは脳表から深い位置にある非常に小さな核であり,開始当初は手法の確立を行ってきたが,RMgへのプローブ挿入が非常に困難でラットの死亡率が高いことから、プローブ挿入をRMgからより大きな部位かつ表層に存在するPAG(中脳水道周囲灰白質)に変更したところ,正確にセロトニン・ドパミン・ノルアドレナリン・GABA・アミノ酸を定量測定することに成功した.現在はLCおよびPAGの2か所にプローブを挿入し,神経伝達物質が安定して測定可能となっている.
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今後の研究の推進方策 |
令和6度は,対照群となるラット(Wistarラット)を用いて,令和5年度の手法を用いてLCおよびPAGにプローブを挿入し,CPMおよび脳内ノルアドレナリン系・脳内セロトニン系の鎮痛機構により,どのように変動するのかを脳マイクロダイアリシス(微小透析法)で正確にセロトニン・ドパミン・ノルアドレナリン・GABA・アミノ酸を定量測定する.ストレスの無い自由行動状態の時と,尾へのピンチ刺激およびによる機械的刺激および肢裏にvon Frey filaments(室町機械動物用Semmes-Weinstein monofilament set)での痛覚刺激を10分負荷した状態での神経伝達物質の変動を測定する. また,令和7年度のうつ病モデル動物(WKYラット)の実験にむけ,対照群で可能であった手法がうつ病モデルラットでも応用できるかも検証し始める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画では、令和5年度にも国内の日本歯科麻酔学会で研究発表する予定であったが、令和6年度の国際疼痛学会での発表に切り替えため、余剰分が発生した。この余剰分については、令和6年度にオランダで開催される国際学会への渡航費用に充てる予定である。
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