研究課題
本研究は、口腔癌におけるシスプラチンへの抗癌剤耐性機構の解明をCa2+フラックスの制御ならびにミトコンドリアの融合、分裂という形態学的変化の観点から解明を目指すことである。また本研究によって、治療抵抗性のメカニズムが明らかとなれば、抗癌剤をより効率的に作用させることが可能となり、癌治療における生命予後の改善や、臓器・機能温存にもつながることが期待される。複数の口腔扁平上皮癌細胞株にシスプラチンを曝露させたのち、IC:50をもとにシスプラチン感受性株:SAS、HSC-2と耐性株:HOC-313、OSC-19の計4株を実験に使用した。これまでの実験結果より、シスプラチンを曝露させるといずれの細胞株も早期ではCa2+が細胞内ならびにミトコンドリア内へ流入することが確認できているが、曝露後24時間経過したのちにCa2+を染色すると感受性株ではミトコンドリア内にCa2+が蓄積し、耐性株ではほぼ定常状態に戻っているという結果を得ている。またCa2+の流入経路を確認したところ、感受性株ではSOCE(store-operated calcium entry)依存的に、耐性株ではVDCE(voltage dependent calcium entry:電位差依存的)依存的に流入していた。SOCEによるCa2+の流入は、小胞体とミトコンドリアのコンタクトが重要といわれているため、電子顕微鏡で確認したところ、感受性株では明らかに小胞体とミトコンドリアの近接が認められた。逆に耐性株にはおいては小胞体とミトコンドリアの近接は認めず、一定の距離を保っていた。
2: おおむね順調に進展している
概ね順調に経過している。シスプラチン耐性株であるOSC-19細胞株を用いてin vivoの実験を行っているが、ヌードマウスに播種させたところ、生着に2-3か月時間を要したため、vivoの実験が少し当初より遅れている。今後はPDXより樹立した治療抵抗性の細胞を使用して同実験を進める予定である。
薬剤によりミトコンドリアへのCa2+の蓄積を確認しているため、今後はその時のミトコンドリアの形態学的変化や、ミトコンドリア、小胞体などのオルガネラコンタクトを確認する予定である。またミトコンドリアの融合と分裂という観点からも、代謝に関わる物質もみていく予定である。
in vivoの実験系で遅れが生じたため、マウス購入費用として前年度使用予定であった額が余った形となった。そのため今年度、in vivoの実験ならびにそこで得られたサンプルを使用して実験を進める予定である。
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Journal of Oral and Maxillofacial Surgery, Medicine, and Pathology
巻: in press ページ: in press
10.1016/j.ajoms.2023.12.007
Laboratory Investigation
巻: 103 ページ: 100060~100060
10.1016/j.labinv.2022.100060