研究課題/領域番号 |
23K09414
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
柄 優至 広島大学, 医系科学研究科(医), 専門研究員 (50737682)
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研究分担者 |
谷本 幸太郎 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (20322240)
阿部 崇晴 広島大学, 病院(歯), 助教 (20806682) [辞退]
國松 亮 広島大学, 医系科学研究科(歯), 准教授 (40580915)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 天然由来抽出成分 / 抗炎症作用 |
研究実績の概要 |
歯周組織構成細胞の炎症性サイトカイン添加時における天然植物由来抽出物の影響の解明を行うため、歯周組織を構成する細胞に対して、IL-1βの炎症性サイトカインの添加を行い、炎症を発現させ、これをin vitro炎症モデルとした。炎症を惹起させた後、各天然植物抽出成分を添加し、炎症性サイトカインである IL-1β、およびTNF-αの発現について、遺伝子発現の解析を実施した。ヒトセメント芽細胞およびヒト歯根膜細胞を用いた 11 種類の天然植物由来成分エキスにおいて検討を行った。11種類の中から抗炎症作用の期待できる5 種類を選定し、更なる検証を行った。 セメント芽細胞における5 種類 (シャクヤク、ユキノシタ、ソウハクヒ、天然由来成分抽出物A、トウキ) の天然植物由来抽出物添加は、1L-1β添加群と比較して、1L-1β遺伝子発現の有意な抑制が確認された。また、歯根膜細胞における5種類(シャクヤク、ユキノシタ、ソウハクヒ、天然由来成分抽出物B、トウキ) の天然植物由来抽出物添加は、1L-1β添加群と比較して、1L-1β遺伝子発現の有意な抑制が確認された。 5種類の天然植物由来抽出物は、歯周組織を構成する細胞に対して、抗炎症作用を有する可能性が明らかとなった。その中で、天然由来成分抽出物Aと天然由来成分抽出物Bについては、ヒトセメント芽細胞およびヒト歯根膜細 胞を用いた炎症モデルに対して、炎症性サイトカインIL-1β、および腫瘍壊死因子TNF-α 遺伝子発現を有意に抑制させることが解明された。歯周組織の炎症を制御しうる一つの手段としての天然由来成分抽出物Aと天然由来成分抽出物Bの抗炎症作用の可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度は、In Vitroとして、植物由来抽出物が歯周組織構成細胞の増殖・基質代謝能に及ぼす影響の調査を計画していた。まず、 株式会社丸善製薬に外注し、11種類の天然由来成分抽出物を抽出および実験にてきした形状に加工して頂いた。次に細胞は、比較的反応の良好であった、ヒト高分化セメント芽細胞株(HCEM)、ヒト歯根膜繊維芽細胞(HPDL)、を用いて検討を行った。細胞増殖能に関して、MTS assay、BrdU assayの2種類を用いて解析した。また、炎症性サイトカインである、IL-1βおよびTNF-αを添加することで炎症性サイトカインにどのような影響を及ぼすを検証した。細胞増殖能および抗炎症作用について検証を繰り返し行い、5種類ないし、2種類の天然由来成分抽出物において炎症抑制作用が確認されたため、ここまでの実験は非常に円滑に行われてきていると考える。 In Vivoにおいては、植物由来成分抽出物摂取が実験的歯の移動時における歯周組織に及ぼす影響の解明を行うことを計画した。これは令和5年および令和6年度を通して行う予定ではあるが、未だ未実施である。これは、In Vitroにおける実験において、実験の質をより向上させるため、11種類と計画よりも多くの天然由来成分抽出物を調査したことで時間を費やしたこと、また、ある程度選定を行ってからの方が、時間的にもコスト的にも無駄のないことが明白であったため、In Vivoの実験は行っていない。このため、総合的な評価はやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
In Vitroの実験としては、植物由来抽出物が歯周組織構成細胞の増殖・基質代謝能に及ぼす影響の解明と、機械的刺激による炎症性サイトカイン添加時における植物由来抽出物の影響の検証を、5種類ないし、2種類の選定し効果のあった天然由来成分抽出物において炎症抑制作用が確認されたため、これらについて更なる検証を行う。細胞伸展装置 Flexer Strain Unitを用いて、機械的な伸展力を負荷する。我々のこれまでの研究結果より、10- 20 kPaの陰圧を 30サイクル/分の周期条件で12 - 48時間負荷するし、細胞及び上清を回収後、炎症性サイトカイン (COX-2、IL-1β、TNF-α 等)、骨吸収関連因子 (RANKL、OPG など) の発現について、現有の定量PCRを用いた遺伝子解析、および Odysseyを用いた定量Western blot 解析を行う。 In Vivoにおいては、植物由来成分抽出物摂取が実験的歯の移動時における歯周組織に及ぼす影響の解明を行う。当講座の手技 に準拠し、ラットの上顎門歯と第一臼歯間にクローズドコイルを装着し、門歯を固定源として第一臼歯を近心に移動させる。適度な矯正力(10 gf)および過度な矯正力(50 gf)を負荷する。歯の移動のみ行った群 (対照群)、各天然由来抽出物摂取を行った群 (天然由来抽出摂取群) を設定し、比較・検討を行う。天然由来抽出物摂取群/非投与群間で経時的な変化を現有のマイクロCTを用いて、三次元的に解析を行う。組織学的検討では、歯の移動後の歯周組織を採取し、現有の全自動包埋装置にて包埋し、H-E染色および骨代謝関連マーカーの免疫組織化学染色を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年に行う予定であったIn Vivo実験が未実施であり、これは、In Vitroにおける実験において、実験の質をより向上させるため、11種類と計画よりも多くの天然由来成分抽出物を調査したことで時間を費やしたこと、また、ある程度選定を行ってからの方が、時間的にもコスト的にも無駄のないことが明白であったため、In Vivoの実験を行わなかった。これに起因して、In Vivo実験のための予算分を使用してしまうと、今後の実験が円滑に行われなくなる可能性が高いことから、次年度に使用することを選択した。令和6年度には、In Vivo実験に関する、試薬、ラット、ラットの歯の移動のための歯科材料等に使用する予定である。また可能であれば実験結果を国内外の学会での発表また、論文作成へと進めていく予定である。
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