研究課題/領域番号 |
23K09470
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
福井 佳代子 (真柄佳代子) 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 講師 (10181611)
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研究分担者 |
二宮 一智 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 教授 (40287785)
今井 あかね 日本歯科大学新潟短期大学, その他部局等, 教授 (60180080)
原 基 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 助教 (90845281)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ヒノキチオール / カンジダ菌 / 抗真菌作用 |
研究実績の概要 |
高齢化社会において健康寿命の延伸は重要な課題である。高齢者の多くは基礎疾患を持ち口腔衛生状態不良で日和見感染菌のカンジダ菌が入れ歯等に増殖し、高齢者の口腔カンジダ症は増加している。現在、抗真菌薬は限られ、一度カンジダ症を発症すると難治となる。我々は漢方生薬ヒノキチオールがカンジダ菌の増殖を抑制し、薬剤耐性を解除する可能性を探ってきた。従来の抗真菌薬と異なり口腔清涼剤にも利用され安全性の担保されるヒノキチオールに着目し、新しいコンセプトに基づいたカンジダ症予防戦略を確立する。 本研究の目的は、①ヒノキチオールのカンジダ菌増殖抑制作用を確認し、作用機序を探り、②口腔カンジダ症の予防にヒノキチオールを臨床応用することである。今回着目したヒノキチオールは、台湾ヒノキの精油から発見された成分で、抗菌効果や炎症を鎮める働きを備える漢方生薬である。食品添加物としても利用されており、口腔清涼剤をはじめ、殺菌剤、育毛剤、抗菌効果を利用した衣類品・生活用品など、様々なものに使用され、安全性は確立されている。ヒノキチオールの抗菌作用は一般に知られているが、抗真菌作用について幾つか文献はあるが、そのメカニズムは解明されていない。ヒノキチオールのカンジダ菌増殖抑制効果をディスク拡散法と、微量液体希釈法で調査した。 ヒノキチオールをカンジダ菌と培地上で培養し、カンジダ菌の増殖を抑制することを明らかにした。ディスク拡散法で薬剤感受性試験を行い、カンジダ菌含有培地を作製し、ヒノキチオールを含ませたディスクと共に培養し阻止円を確認し、抗真菌効果を明らかにした。既存の抗真菌薬であるフルコナゾールとディスク拡散法で抗真菌作用を比較すると、ヒノキチオールがより長時間の抗真菌効果を示した。また、微量液体希釈法によりヒノキチオールのカンジダ菌増殖のMIC測定を行い、評価・検討し、カンジダ菌の増殖抑制効果を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
使用しているP2ルームのクリーンベンチが入れ替えのため、その間使用できず、使用可能となった後もバーナーが使用出来ず、実験が滞った。 また、個人としては、春に親の入院介護、夏は自身の肋骨骨折、冬に右手薬指骨折と続き、これも実験を遅らせた。
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今後の研究の推進方策 |
ヒノキチオールと既存の抗真菌薬との相互作用:微量液体希釈法によりカンジダ菌増殖におけるヒノキチオールといくつかの既存の抗真菌薬との相互作用を確認する。 ヒノキチオールの薬剤耐性解除作用:薬剤耐性の作用機序となるCdr1ポンプを組み込んだ菌株を用いて、ヒノキチオールとアゾール系抗真菌薬を併用し、薬剤耐性によるカンジダ菌増殖の抑制を確認し、ヒノキチオールの薬剤耐性解除作用を評価・検討する。 ヒノキチオールの活性酸素産生:ROS assay kitを用いて、活性酸素を産生すると言われる既存の抗真菌薬ミコナゾールとヒノキチオールの活性酸素産生を測定し検討する。 口腔カンジダ症マウスにおける抗真菌作用:実験的口腔カンジダ症マウスを作製し、ヒノキチオールを投与し、有効性と安全性を確認する。マウスに対する有効量・ED50と致死量・LD50を調査する。 これらの実験結果を総括し、ヒノキチオールの働きから真菌予防薬開発に発展させ、論文を完成させて公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、様々な理由で実験が進まず、使用額が少なかった。2023年度の学会旅費は講座研究費を用いた為、科研費の旅費が少額となった。実験用の物品は、講座にあるものを使用した為、購入品が少なく、物品費が少なかった。 今後の使用計画として、試薬など様々なものが価格上昇しており、その価格上昇分に使用する予定である。次年度は計画的に使用し、旅費も科研費を用いる予定である。
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