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2023 年度 実施状況報告書

先天的な味覚過敏の一因は、頭部神経堤細胞によるプラコードニューロンの誘導撹乱か?

研究課題

研究課題/領域番号 23K09486
研究機関奥羽大学

研究代表者

鈴木 礼子  奥羽大学, 歯学部, 准教授 (90333723)

研究分担者 今井 元  奥羽大学, 歯学部, 准教授 (90291343)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2027-03-31
キーワード頭部神経堤細胞(CNCC) / バルプロ酸(VPA) / 上皮間葉転換(EMT) / delamination / migration / Sox9 / Sox10
研究実績の概要

排卵時刻がほぼ斉一なため、摘出時刻により、胎仔の体節数に基づいた発生ステージ(S: somite stage)を揃えることが可能な Iar: Wistar-Imamichi ラットを用い、胎齢8日(E8)夜10時(頭部神経堤形成開始直前)に、実験群はバルプロ酸(VPA)/生理食塩水溶液(500mg/kg)を、対照群は生理食塩水のみを母獣に単回背部皮下投与した。その後、次の(1)-(3)の実験を行った。
(1)E9胚(S4-S7)において、頭部神経堤の上皮間葉転換(EMT)、すなわち、頭部神経堤細胞(CNCC)の形成に関与する Sox9 のホールマウント in situ ハイブリダイゼーション(WISH)、(2)E10-E11胚(S9-S30)において、CNCCの移動マーカーである Sox10 のWISH、(3)E12胚(S28-S42)において、抗neurofilament抗体を用いたホールマウント免疫染色(WIHC)。
これら実験の主な結果を以下に記す。
(1)VPA投与群では、中脳から後脳前方(ロンボメア1, 2)における Sox9陽性CNCCの減少傾向が見られ、その領域におけるCNCCの形成、もしくは、形成直後の生存に異常が生じたことが示唆された。
(2)VPA投与群では、ロンボメア1-4から delamination し、将来的に三叉神経と顔面神経の軸索伸長に寄与することが予想される Sox10陽性CNCCの局在に攪乱が見られ、三叉神経節や顔面神経節から伸びる軸索突起の到達部位にも影響が出ることが示唆された。
なお、上記(3)の実験結果、すなわち、CNCC由来の脳神経の軸索伸長にVPAが及ぼす影響についての詳細な解析は、まだ終了していないが、前述の Sox10陽性CNCCの挙動を反映するような、正常とは異なる部位への軸索伸長がいくつかのサンプルで見つかっている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

delamination 直後から移動中の頭部神経堤細胞(CNCC)の有用なマーカーとして用いることができ、さらに、神経細胞やグリア細胞への分化運命の定まった CNCC のマーカーとしても有用である Sox10 のホールマウント in situ ハイブリダイゼーション用 mRNA プローブの作製に手間取ったため。そのため、Sox10 の局在変化をふまえた上で実施するべき、VPAによる脳神経の軸索伸長攪乱の解析も遅れた。

今後の研究の推進方策

1. 胎齢8日(E8)夜10時にバルプロ酸(VPA) 500mg/kg を Iar: Wistar-Imamichi ラット母獣に単回背部皮下投与した後、E9-E12において胚を摘出し、以下の実験を実施する。
(1)E9胚において、細胞死や細胞増殖能のマーカーを用いて、中脳からロンボメア(R)1, 2における上皮間葉転換(EMT)直後の頭部神経堤細胞(CNCC)の減少傾向を検証する。
(2)E10-E11胚において、正常ではR2より後方の神経上皮に発現(特にR3とR5で強く発現)すると共に、R4から第二鰓弓に移動するCNCCに発現する Hoxa2 のホールマウント in situ ハイブリダイゼーション(WISH)を実施し、VPAがロンボメアの分節構造に及ぼす影響、または、Hoxa2陽性CNCCのdelaminationや移動に及ぼす影響を解明する。さらに、Otx2、Krox20、Fgf8などの発生関連遺伝子転写産物の発現解析も検討する。
(3)E12胚において、成熟ニューロンマーカーである抗neurofilament抗体や未熟ニューロンマーカーである抗β tubulin III 抗体を用いたホールマウント免疫染色 (WIHC)を実施し、VPA曝露によって、三叉神経および顔面神経の軸索のネットワークが、どのように攪乱されるのかを解明する。さらに、E12胚の三叉神経節あるいは顔面神経膝神経節に蛍光色素を挿入して神経経路トレーシングを行い、三叉神経と顔面神経の中継核への投射に対するVPAの影響を解析する。
2. E8夜10時にVPA 500mg/kg を Iar: Wistar-Imamichiラット母獣に単回投与した後、摘出したE9-E10胚の頭部神経堤をDiI標識してから30時間全胚培養して細胞追跡実験を実施し、VPAがCNCCの移動に及ぼす影響を in vitro で検証する。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた理由は、(1) Sox10 mRNAプローブの作製に手間取ったことによって、実験計画全体に少し遅れが生じたから、また、(2)所属研究機関の方針により、新型コロナウイルス感染症が5類に移行後も、令和5年度中は、感染対策のため学会参加ができなかったからである。
次年度使用額は、消耗品(cDNAクローン、抗体類、試薬類など)の購入費、国内学会参加費、国際的学術雑誌への投稿論文の英文校正費や投稿料などに充てる予定である。
なお、物品購入先業者からの請求書発行において遅延が生じたことにより、令和6年3月末までに納品され支払額が確定しているものの、令和5年度の所属研究機関の会計処理上、未払いとなっている分が約72万3千円ある。従って、実際の次年度使用額は、約84万7千円程である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2024

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Effect of valproic acid on the formation and migration of cranial neural crest cells at the early developmental stages in rat embryos2024

    • 著者名/発表者名
      Suzuki Reiko、Imai Hajime
    • 雑誌名

      Congenital Anomalies

      巻: 64 ページ: 47~60

    • DOI

      10.1111/cga.12553

    • 査読あり

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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