研究課題/領域番号 |
23K09508
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
長田 恵美 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (00304816)
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研究分担者 |
於保 孝彦 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (50160940)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | サブスタンスP / 口腔レンサ球菌 / Streptococcus mutans / Streptococcus sanguinis / Streptococcus oralis / Streptococcus gordonii |
研究実績の概要 |
サブスタンスPが心血管疾患の病原因子である口腔レンサ球菌に及ぼす影響について以下の成果を得た。 1.サブスタンスPの口腔レンサ球菌に対する抗菌性を調べた。Streptococcus sanguinis、Streptococcus oralis、Streptococcus gordonii、およびStreptococcus mutans(血清型c)に対するサブスタンスPの最小発育阻止濃度(MIC)をmicro-dilution methodで評価した。サブスタンスPの濃度は15.6-1,000 μg/mlとしたが、いずれの濃度でも用いた菌の増殖を完全に阻止することはできなかった。1,000 μg/mlの場合、用いた菌の対照(サブスタンスP無添加)に対する増殖抑制率は約20-30%であった。 2.1.と同等にS. mutansの各血清型菌株(血清型c、e、f)に対するサブスタンスPの抗菌性を調べた。MICはいずれも1,000 μg/ml <となり、1,000 μg/mlの場合、対照(サブスタンスP無添加)に対する菌の増殖抑制率はS.mutans Xcがもっとも高く、31.2%を示した。 3.S. mutans によるバイオフィルム形成能に対するサブスタンスPの作用を調べた。血清型cのS. mutans MT8148およびS. mutans Xcを0.2%スクロース添加Brain-heart infusion brothに播種し、サブスタンスP(1.25-10 μg/ml)とともに培養してマイクロプレートウェルに形成されたバイオフィルムを定量した。サブスタンスPはS. mutans Xcのバイオフィルム形成を抑制し、1.25 μg/mlの濃度で、対照(サブスタンスP無添加)に対する形成抑制率は21.5%を示したが、それ以上の濃度のサブスタンスPを添加しても形成抑制率は変わらなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サブスタンスPが口腔レンサ球菌の病原性に及ぼす影響として、サブスタンスPの口腔レンサ球菌(Streptococcus sanguinis、Streptococcus oralis、Streptococcus gordonii、異なる血清型のStreptococcus mutansに対する抗菌性、および血清型c のS. mutansのバイオフィルム形成能に対するサブスタンスPの作用を調べることができたので、概ね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
①サブスタンスPの口腔バイオフィルム細菌に対するバイオフィルム形成能への影響 サブスタンスPの口腔レンサ球菌10菌種に対するバイオフィルム形成能への影響を共焦点レーザー顕微鏡で観察する。GFPでラベルした菌をサブスタンスP存在下で観察用滅菌スライドグラスディッシュで培養し、2、5、24時間後に火炎固定後、共焦点レーザー顕微鏡で観察する。データを3次元に再構築し、バイオフィルムの厚さを測定する。バイオフィルム形成能をサブスタンスP非存在下の場合と比較する。サブスタンスPの濃度は通常の生体濃度である10-6 Mを中心に検討する。
②サブスタンスPの口腔バイオフィルム細菌によるヒト動脈内皮細胞傷害能への影響 ヒト動脈内皮細胞殺傷能を持つ口腔レンサ球菌を用いて、菌をサブスタンスPで事前に刺激した場合の、口腔レンサ球菌のヒト動脈内皮細胞の傷害能をLDH release assayで検討する。口腔レンサ球菌をサブスタンスPで1時間刺激した後、菌を洗浄し、内皮細胞と5%CO2下37℃で共培養し、菌による細胞傷害を倒立型顕微鏡による形態観察とLDH release assayで判定する。傷害の強さをサブスタンスPで刺激しなかった場合と比較する。サブスタンスPの濃度は通常の生体濃度である10-6 Mを中心に検討する。また用いた濃度でサブスタンスPがヒト動脈内皮細胞に傷害を与えないか確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費、旅費がが当初計画より少ない使用で研究を行うことができたため、次年度使用額が生じた。今年度はこれを物品費として用い、研究のさらなる推進を図る。
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