研究課題/領域番号 |
23K09514
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
竹内 麗理 日本大学, 松戸歯学部, 准教授 (60419778)
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研究分担者 |
有川 量崇 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (50318325)
田口 千恵子 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (80434091)
矢口 学 日本大学, 松戸歯学部, 助教 (90732181)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 薬物性歯肉増殖症 / 甘草 / 病態モデル / ラット / 歯肉線維芽細胞 |
研究実績の概要 |
薬物性歯肉増殖症は、薬物(抗てんかん薬フェニトイン、免疫抑制薬シクロスポリン、血管拡張薬ニフェジピン等)や炎症反応刺激などが原因となり、歯肉線維芽細胞の過度の増殖、歯肉コラーゲンなど細胞外基質の堆積を生じることで発症すると報告されている。研究の最終目標は、薬物性歯肉増殖症の新規治療法および予防法を開発することであり、本研究では生薬の一つであるカンゾウを用いて実験を行う。カンゾウは全身的な炎症反応の動物モデル実験により抗炎症作用をもつことが証明されており、さらに歯肉炎・歯周炎の治療・予防効果も認められている。 本年度には、ラットの舌に炎症を誘発し、その後、舌の規格化写真およびヘマトキシリン・エオジン染色標本で病変部を経時的に観察した。また同部位からタンパク質を抽出し炎症性因子の発現を解析した。処置後1、7時間の病変部において水泡形成および上皮剥離を伴う潰瘍形成が認められ、3、5、7日では明らかな真皮への炎症性細胞浸潤が見られた。9日では上皮の修復が開始し、16、21日において上皮・結合組織が再生していた。処置後7時間および3日後にはインターロイキン-1β、インターロイキン-4、インターロイキン-6、インターロイキン-10、腫瘍壊死因子(TNF)-αのタンパク発現を認めた。インターロイキン-1β・6およびTNF-αは炎症誘発因子、インターロイキン4・10は炎症抑制因子として知られている。 また、カンゾウ成分18α-グリチルレチン酸は歯肉線維芽細胞のアポトーシスを誘導することを発見し、18α-グリチルレチン酸の治療薬としての可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
薬物性歯肉増殖症の治療法および予防法を開発するため、歯肉線維芽細胞でのin vitro研究および病態モデル動物作製のためのin vivo研究を行い、双方で進歩が見られた。 in vitro研究では、フェニトインで刺激した歯肉線維芽細胞において、カンゾウ成分18α-グリチルレチン酸がBCL2 mRNA発現を抑制し、CRADD、FADD、RIPK1、TNFRSF1A、TRAF2、カスパーゼ2・3・9 mRNA発現を亢進することが分かった。 in vivo研究では、ラットの舌に局所的な炎症症状を誘発することに成功した。このモデルを用いることによって、カンゾウの抗炎症効果および薬物性歯肉増殖症治療の可能性を明らかにすることができる。
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今後の研究の推進方策 |
薬物性歯肉増殖症の治療法および予防法を開発するために、in vitro研究で、フェニトインで刺激した歯肉線維芽細胞において、カンゾウ成分18α-グリチルレチン酸がBCL2、CRADD、FADD、RIPK1、TNFRSF1A、TRAF2、カスパーゼ2・3・9 タンパク質の発現に、どのように影響するかを検討する。さらにシクロスポリン、ニフェジピンで刺激した歯肉線維芽細胞でも、18α-グリチルレチン酸によるmRNAおよびタンパク質発現への影響を解析する。 また、炎症誘発ラットでのin vivo研究で、18α-グリチルレチン酸の抗炎症作用を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は試薬等消耗品の購入費を抑えることができた。国際学会の旅費を支出しなかった。 次年度、ウエスタンブロット法によるタンパク質発現解析を行う予定で、多数の抗体を購入する必要がある。また、国際誌に2報の論文を投稿予定であり、英文校正費用、投稿・掲載費用を必要とする。
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