研究実績の概要 |
転移性非小細胞肺癌(mNSCLC)に対する一次治療としてのトレメリムマブ+デュルバルマブ+化学療法(T+D+CT)は、全生存期間と無増悪生存期間において、D+CTは無増悪生存期間のみにおいてCT単独療法よりも優れることが示されている。一方で、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は高額であり、これらの費用対効果は必ずしも明らかではない。本研究は、mNSCLC患者に対するICI併用療法の費用対効果を、日本の公的医療費支払者の立場から評価することを目的とした。各治療群の費用と質調整生存年(QALY)、そして相対的な費用対効果を推計するために分割生存分析(PartSA)モデルを用いたシミュレーションを行った。生存期間のデータはPOSEIDON試験より取得した。各種医療費は公定薬価および健保組合データベースを用いた統計解析により推定した。効用値は海外で公表されている情報源から設定した。モデルによる外挿結果をもとにCTと比較したT+D+CTおよびD+CTの増分費用効果比(ICER=増分費用÷増分QALY)を推計した。なお、パラメータ設定の不確実性の影響を評価するために各種の感度分析を行った。基本分析の結果、CTに対するT+D+CT、D+CTのICERはそれぞれ79,548,053円/QALY(=39,834,984円÷0.501)、76,516,737円/QALY(=22,670,176円÷0.296)と推計された。感度分析の結果、無増悪状態の効用値が ICER に強く影響することが示された。CTに対するT+D+CTおよびD+CTのICERは日本の癌治療の許容ラインを超過したため、mNSCLCに対するICI併用治療は費用対効果の面で課題があることが示唆された。
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