研究課題/領域番号 |
23K09642
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西原 進吉 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 客員研究員 (10584344)
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研究分担者 |
池田 敦子 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (00619885)
小林 澄貴 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 客員研究員 (10733371)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ピレスロイド系農薬 / 発達障がい / ADHD / 農薬曝露 |
研究実績の概要 |
本研究は、近年増加している発達障がいの子どもと、農薬への日常的な曝露の関係性を調査するものである。 本研究がターゲットとするピレスロイド系農薬は、農作物に対して殺虫用途で使用されるのみならず、掃除機のゴミパック、防虫建材、蚊取り線香、虫退治用スプレー、ペット用シャンプー、虫よけスプレー等の製品として日常生活で多用されており、我々の生活と密接に関わっている。人体に直接吹きかけるタイプの製品も多く販売されており、子どもの神経発達への影響が懸念されている。しかしながら、同農薬への日常曝露と子供の発達との関連性を検討した研究は、世界的にみても数が極めて少なく、精度の高い前向きコホートのデータを用いた研究に絞ればさらに限られている。そこで、本研究では、児が7歳の時に収集し、凍結保存されている尿検体から、ピレスロイド系農薬の代謝物を測定し、ADHD等の発達障がい傾向のアウトカム情報との関連を検討することで、両者の関係性について明らかにする。 本研究において最終的に得られる成果の価値は、前向きコホート研究の枠組みで実施するという点で、縦断的に収集されているバイアスの少ないデータをもとに、可能な限り変数間の交絡が生じない条件の中において検討を進めることによりもたらされる。 したがって、2023年度においては、蓄積されたこれらのデータを改めて精査することで、次年度以降に実施する曝露測定に先立って、測定する参加者の情報を改めて整理し、再サンプリングを実施した。その結果、当初の計画通りのサンプリング数で、次年度以降に測定を実施しても問題がないことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、主としてピレスロイド系農薬を対象に、学童期の子どもへの曝露実態を明らかにし、神経発達との関連を検討することを目的としている。 本研究遂行に必要なことは、(1)曝露情報の収集、(2)交絡データの収集、(3)アウトカムデータの収集、(4)結果の解析 である。本研究では、現段階で、(2)と(3)までほぼ完了している。 加えて、2023度においては、蓄積されたアウトカム情報、交絡因子情報の再整理を実施し、これらの変数情報に誤分類等が生じていないことが改めて確認されている。また、サンプリングされた対象者のADHD傾向に関する分布や、その分布と対象者の基本属性との関連についても検証することができている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度以降に、既に収集され、凍結保存されている尿検体から、ピレスロイド農薬の代謝物を測定し、学童期の児がどの程度ピレスロイド系の曝露に暴露しているのかという評価を行う。測定する代謝物はtCDCA, DCCA, 3-PBAを予定している。 その後、様々な交絡因子を調整した上で、これらの曝露濃度とADHD傾向等のアウトカムとの関連について検討する。ただし、曝露測定に関しては、分散して測定を行うと、測定間の誤差が生じる可能性があるため、まとめて測定することで、測定誤差を最小限にすることが望ましい。このような観点から、農薬の曝露濃度の測定は、同時期にまとめて実施することを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究において最も重要な点は、測定誤差を最小限にして、尿中の農薬やその代謝物を測定することである。 測定は外部機関で実施するが、年度毎に分配される研究費で複数回に分けて測定を行うと、測定毎の誤差が生じる懸念がある。 したがって、本研究では、2023年度の未使用額と2024年度以降の直接経費を合算して測定費用に充て、検体をまとめて測定する予定であるために次年度使用額が生じている。これは研究結果の精度を高めるために必要な措置である。
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