研究課題/領域番号 |
23K09645
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
崔 正国 福井大学, 学術研究院医学系部門, 講師 (90572115)
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研究分担者 |
稲寺 秀邦 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (10301144)
平工 雄介 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (30324510)
趙 慶利 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (90313593)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 肺動脈性肺高血圧症 / ピレスロイド系殺虫剤 / フェンバレレート / 内皮細胞代謝 |
研究実績の概要 |
肺動脈性肺高血圧症(PAH)は肺血管リモデリングにより肺血管抵抗が増大、肺動脈圧が上昇し、最終的には心不全(右心不全)へ進行する難治性致死的疾患である。特に、発症しやすいのは比較的若年者であり、特異的な治療法がなく対症療法しかないのが現状である。最近、PAHは遺伝要因に加え、環境因子による増悪の可能性が有力視化されている。本研究では、ピレスロイド系殺虫剤が如何にPAHの発症に影響するかを、肺微小血管の代謝異常とリモデリングについて詳細に解析することで、PAHの予防対策に貢献することを目的としている。本年度は、マウス心臓内皮細胞を用いてピレスロイド系殺虫剤であるフェンバレレートにより処理を行い、一定期間培養し、細胞の生存率、遺伝子とタンパク質の発現変化及び内皮細胞の代謝機能について検討した。その結果、内皮細胞はフェンバレレートの処理により血液中の栄養物などの必要な成分を組織へ輸送する仲介能力に影響を受けることが判明した。また、内皮細胞の糖代謝に影響を与え、グルコースの細胞内取り込みと解糖系の活性化に変化をもたらし、アミノ酸代謝にも変化を引き起こすことが明らかになった。さらに、そのシグナル伝達系を詳細に解析するために、フェンバレレートによる処理後のmiRNA発現プロファイリングの変化を検討した。Gene Ontology (GO) システムにより解析を進めると、生物学的プロセスオントロジーは主に代謝プロセスが関与することが示唆された。細胞成分オントロジーの解析結果は主に細胞内膜結合小器官に関連した。分子機能オントロジーに関しては、主にタンパク質結合と転移酵素活性の変化が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、予定通りにマウス心臓内皮細胞を用いてピレスロイド系殺虫剤であるフェンバレレートにより処理を行い、内皮細胞の代謝機能の変化について検討することができた。現在、フェンバレレートにより内皮細胞の輸送機能に影響を受けることが判明し、そのシグナル伝達系に寄与するmiRNA発現プロファイリングの変化を確認することができた。さらに、Gene Ontology (GO) システムにより解析を進めており、主に内皮細胞の代謝プロセスの変化が関与していることが確認でき、一部有意な変化を示す標的分子を同定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、マウス心臓内皮細胞を用いてフェンバレレートの処理による細胞の代謝機能の変化について検討した。また、そのシグナル伝達系に寄与するmiRNA発現プロファイリングの変化を確認することができた。次年度は、さらにマイクロアレイGeneChipを用いて遺伝子発現解析を進め、メタボローム解析を行い、フェンバレレートがPAHの発症に影響を及ぼす詳細な分子メカニズムを解明し、PAHの予防に重要な役割を担う候補分子を同定する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は、マイクロアレイGeneChipを用いた遺伝子発現解析を進め、メタボローム解析を行い、その次のステップである動物実験の準備をしなければならない。本年度よりも多くの予算が必要となるため、次年度の予算をさらに確保した。
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