研究実績の概要 |
2023年度は、尿中マイコトキシン分析法の開発と妥当性評価を行った。 2020から2022年に報告されたマイコトキシンの人バイオモニタリング(HBM)研究について、各種検索サイトより文献を収集した。HBM報告数・健康影響を考慮して、デオキシニバレノール(DON)、オクラトキシンA(OTA)、ゼアラレノン(ZEN)など9種類を測定物質とした。測定機器にはLC-MS/MS (Agilent Technologies, Ultivo)を使用した。基礎検討には健常成人のプール尿を用い、尿前処理法、分離カラム、各種LC-MS/MS条件の最適条件を探索した。 HPLC逆相分離カラムから3種検討した結果、Raptor FluoroPhenyl (RESTEK, 2.1×100mm, 2.7 um)が最も高分離能を示し、その後の検討に用いた。尿前処理には固相抽出Isolute Multi-Clean (バイオタージ社製)および塩析を用いた液-液抽出を組み合わせた前処理で最も感度および再現性試験結果が良好であった。測定下限値(limit of detection, LOD)はDON 0.24 ug/L、OTA 0.27 ug/L、ZEN 0.03 ug/Lとなった。HBMを用いて一日耐用摂取量(TDI)との比較検討をするためには、尿中排泄率を加味してDON 10 ug/L、OTA 0.3 ug/L、ZEN 2 ug/L程度感度が必要であり、これらと比較すると、本研究の測定感度はマイコトキシンリスク評価に十分応用可能な性能を示していると思われる。 健常成人の尿中マイコトキシンについて予備的に分析した結果、50%以上の尿からいずれかのマイコトキシンについて定量下限値以上の定量値を得ることができた。
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