研究課題
本研究は、大規模医療情報データベース及び一般地域住民対象のコホート研究のデータを用い、若年性認知症発症後の薬物療法の実態を記述し、また、勤労者世代における生活習慣や薬剤の累積曝露と、若年性認知症発症・認知機能低下との関連を明らかにすることを目的とし、以下の3点の検討に取り組む。①大規模医療情報データベースを使用した若年性認知症患者の薬物治療の実態調査:本年度、アルツハイマー病治療薬が新医薬品として承認をされたことから、その承認前後の変化を捉えるためにも次年度以降の調査を行うこととした。②大規模医療情報データベースを使用した生活習慣・薬剤負荷と若年性認知症発症との関連の検討:本年度は、認知症発症のリスクファクターの可能性が報告されている糖尿病に着目し、認知症との関連の検討に先立ち、2型糖尿病患者における臨床的惰性の実態を調査した。2型糖尿病治療薬の初回単独処方を受けた患者の約27%に臨床的惰性が発生していたことから、認知症予防のためにも、2型糖尿病のより厳格な治療が求められることが明らかになった(第28回日本薬剤疫学会学術総会. 最優秀演題賞)。③岩手県花巻市大迫町の一般地域住民を対象とした生活習慣と認知機能低下との関連の検討:大迫町の住民を対象とした検診を行い、頭部MRI撮影、認知機能検査(Mini Mental State Examination)をはじめとするデータを収集した。また、妊娠・出産経験と無症候性脳血管障害との関連(J Atheroscler Thromb. 2023)、出産回数と認知機能との関連におけるアテローム性動脈硬化の影響(第82回日本公衆衛生学会学術総会)、デンタルヘルスと海馬の萎縮との関連(Neurology. 2023)について、国際学術誌および国内学会にて発表した。
3: やや遅れている
大規模医療情報データベースを使用した若年性認知症患者の薬物治療の実態調査について、本年度アルツハイマー病治療薬が新医薬品として承認をされたことから、その承認前後の変化を捉えるためにも次年度以降の調査を行うこととした。
①大規模医療情報データベースを使用した若年性認知症患者の薬物治療の実態調査大規模医療情報データベースを購入し、ICD-10コードおよびATCコードで特定した若年性認知症患者を対象とし、原因疾患別に新規発症後の薬物療法について、処方件数および処方割合を求め記述する。②大規模医療情報データベースを使用した生活習慣・薬剤負荷と若年性認知症発症との関連の検討大規模医療情報データベースを購入し、ICD-10コードおよびATCコードで特定した若年性認知症患者を対象とし、若年性認知症発症に関連する因子を明らかにする。追跡開始時及び追跡期間中の薬剤曝露および特定健康診査データから得られた生活習慣(喫煙、飲酒、食事、運動、睡眠による休養に関する11項目)の累積平均曝露量を主効果とした時間依存性Cox比例ハザードモデルを使用し、薬剤負荷及び各生活習慣の若年性認知症発症に対するハザード比を算出することにより、検討を行う。③岩手県花巻市大迫町の一般地域住民を対象とした生活習慣と認知機能低下との関連の検討大迫町の住民を対象とした検診を行い、頭部MRI撮影、認知機能検査をはじめとするデータを収集し、睡眠時間と認知機能低下との関連を行う。各種危険因子に加え、24時間自由行動下血圧測定から得られた夜間血圧、無症候性脳血管障害の有無で調整した多変量回帰モデルを使用し、解析を行う。
データベース入手に際し、本年度アルツハイマー病治療薬が新医薬品として承認をされたことから、その承認前後の変化を捉えるためにも、次年度以降に購入することとした。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)
Journal of Atherosclerosis and Thrombosis
巻: 30 ページ: 956~978
10.5551/jat.63592
Neurology
巻: 101 ページ: e1056~e1068
10.1212/WNL.0000000000207579