研究課題/領域番号 |
23K09763
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮尾 昌 京都大学, 医学研究科, 准教授 (90711466)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 法医病理学 |
研究実績の概要 |
本研究は、急性心筋梗塞におけるNASHを背景としたマクロファージの役割を解明することを目的とした。肥満関連疾患のMetabolic dysfunction-associated steatohepatitis[MASH、過去の非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)]は、急性心筋梗塞発症の原因の一つであることが分かっている。マクロファージは病的状態で炎症と抗炎症反応のバランスが偏ることで全身の炎症性疾患病態に複雑に関連することが知られる。しかし、MASH患者においてマクロファージがどのように急性心筋梗塞発症を促進あるいは抑制するかは殆ど分かっていなかった。2023年度は以下のことを明らかにした。 ①心臓を栄養する冠動脈のうち前下行枝(LAD)を結紮し1週間後、4週間後に、心筋の壊死、炎症、線維化、代償性心肥大を示し、ヒトの急性心筋梗塞をよく模倣するモデルが作製できた。 ②LAD結紮後の梗塞部や周囲の組織への炎症反応は、好中球やリンパ球が主体でありマクロファージの浸潤もみられるものの相対的に軽度な浸潤にとどまることが分かった。 ③梗塞部周囲の組織で、線維芽細胞の浸潤と膠原線維や細胞外マトリックスの沈着、心筋細胞の極性の異常や心筋細胞の肥大や萎縮、断裂、細胞内ミトコンドリアの過剰分裂が起きることが分かった。 ④LAD結紮による心臓病態についての理解は進んだものの、未だMASH併存時の心臓および肝臓病態の関連は不明で2023年度中には解析できなかった。 ⑤少なくとも心臓組織の炎症反応はマクロファージの直接的な寄与は大きくないようにみえるが、マクロファージの遊走因子の放出などの間接的な炎症反応の寄与を解析することはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LAD結紮の手技向上により、生存率、心筋壊死範囲の再現性が改善し、肉眼解析、血清生化学検査、心超音波検査、病理組織解析、電子顕微鏡学的解析のための最適なサンプリングが可能となってきたため。
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今後の研究の推進方策 |
急性心筋梗塞モデルの心臓病態が明らかになってきたため、今後はMASHモデルとの組み合わせをすることで、心臓病態や肝臓病態が悪化するかどうか、悪化あるいは改善する場合には、何がその原因として寄与しているかのメカニズムに解明に向け研究を進める。 今後の研究により肥満関連疾患の複雑な多臓器障害の理解を深め、新たな診断・治療法開発につながることを目的とする。
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