研究課題/領域番号 |
23K09781
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
武藤 淳二 科学警察研究所, 法科学第一部, 主任研究官 (80432186)
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研究分担者 |
堀田 明豊 国立感染症研究所, 安全実験管理部, 室長 (90392323)
石原 朋子 国立感染症研究所, 研究企画調整センター, 室長 (30450555)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ナノポアシーケンサー / リード / 野兎病菌 / 識別ツール / WIMP / 亜種 / 同属近縁種 / 高病原性細菌 |
研究実績の概要 |
作成した識別ツールmclassifyは、目的の菌種と同属近縁種のデータベース(DB)を作成し、ナノポアシーケンサーで得たデータをそれらに当てて解析することにより、各リードがどの菌種に識別されたかを判定する。2023年度は、野兎病菌亜種のツラレンシス、ノビシダ、ホルアークティカおよびFrancisella hispaniensisのDBを作成し、培養試料から得た、野兎病菌亜種ツラレンシスSCHU株、野兎病菌亜種ノビシダU112株およびF. hispaniensis Fhsp1株の各リードデータの識別を試みた。DB作成にあたり、各ゲノム配列の取得にはncbi-genome-downloadを用いた。また比較として、ナノポアテクノロジーズ社が提供する種同定のための分析ツールWIMPも使用した。 SCHU株のリードデータの識別では、mclassifyとWIMPで亜種ツラレンシス、ノビシダおよびホルアークティカと判定されたリード数はほぼ同じだったが、F. hispaniensisと判定されたリードがWIMPで108あったのに対し、mclassifyではF. hispaniensisと判定されたリードはなかった。 Fhsp1株のリードデータでは、亜種ノビシダと判定されたリードがWIMPで170、mclassifyで24だった。また、WIMPで亜種ホルアークティカおよびツラレンシスと判定されたリードが2および3あったのに対し、mclassifyではこれらの亜種と判定されたリードはなかった。 U112株のリードデータでは、F. hispaniensisと判定されたリードがWIMPで14、mclassifyで4だった。また、WIMPで亜種ホルアークティカおよびツラレンシスと判定されたリードが74および109あったのに対し、mclassifyではこれらの亜種と判定されたリードはなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野兎病菌亜種ツラレンシスSCHU株、野兎病菌亜種ノビシダU112株およびF. hispaniensis Fhsp株のナノポアシーケンスデータを取得し、mclassifyにかけてリードの識別能力を評価することができた。 野兎病菌亜種ツラレンシスSCHU株データのmclassifyでの識別に関しては、亜種の識別はWIMPとほぼ同様の結果であったが、F. hispaniensisと判定されるリードはなかった。また、野兎病菌亜種ノビシダU112株およびF. hispaniensis Fhsp株の識別に関しては、野兎病菌亜種のホルアークティカおよびツラレンシスと判定されたリードはなかった。 以上のことから、識別が不十分な結果も見られたが、おおむね順調に研究結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
今回、ncbi-genome-downloadで取得したゲノム配列をそのまま用いたが、NCBIのデータベースに含まれるゲノム配列には種名割り当て等が誤っているものも見られるため、取得したゲノム配列は系統関係等をよく確認してから使用する。確認されたリードの誤判定については、識別ツール内部の処理を追跡し、対応が可能かどうかを検討した上で、識別のアルゴリズム等の改良を行う。 また、ペスト菌など野兎病菌以外の高病原性細菌およびそれらの同属近縁種のデータを取得し、想定どおり識別できるかどうか検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題で実施する実験が当初の予定より減少してしまったため。次年度は識別に使用する菌種や試料を増やす予定で、識別ツールの改良等も予定していることから、次年度分として請求した助成金と合わせて経費を使用できると考えている。
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