研究課題/領域番号 |
23K09838
|
研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
谷津 裕子 宮城大学, 看護学群, 教授 (90339771)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
キーワード | 質的研究 / チーム / ガイドライン開発 / 保健医療分野 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、保健医療分野におけるチームで行う質的研究ガイドラインを開発し、その妥当性と有用性を評価することである。 初年度である2023年度は、チームで質的研究に取り組む上で必要な基本的前提や方針、推奨される方法について先行研究で明らかになっている知見を整理するため、Scoping Reviewに取り組んだ。文献検索データベースCINAHL with Full Text とMEDLINEを用い、包含基準・除外基準に基づいて選定した結果、17の文献が該当した。対象文献に記されたデータを本研究者が開発したフォームを使って抽出したのち、テーマ統合法(Thomas & Harden, 2008)の第1段階として、一次文献の結果をライン・バイ・ラインでコード化した。その後、第2段階としてこれらのフリーコードを関連領域に編成して記述的なテーマを構築した。得られた記述的テーマは、「チームビルディング」「文献検討」「研究倫理」「再帰性」「データ収集」「データ生成」「データ分析」「統合・考察」「ライティング・公表・報告書作成」「研究の質評価」「経済的問題と対処」「QDAS」の12に分類された。 2023年度に開始したScoping Reviewは、保健医療分野におけるチームで行う質的研究ガイドラインの開発における基礎であり、質的研究チーム活動に関して蓄積された知見を整理する上で重要である。2024年度はテーマ統合法の第3段階に進み、分析的テーマを開発して、Scoping Reviewを完成させる予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、2023年度内にScoping Review を終了させ、ガイドライン原案を作成する予定であった。しかし、実際は17の対象文献全てが英語論文であり、研究責任者が自ら翻訳を行なったため、予定よりも時間を要した。また、得られたデータの数が膨大であり、それらを1つずつ丁寧にコード化する作業にも時間を要している。しかし、これらは適切なデータを生成し分析するために不可欠なプロセスであり、拙速に進めることはガイドラインの妥当性や有用性に負の影響を与えかねない。 そのため、2024年度は引き続き丁寧にデータ分析を行いScoping Reviewを完成させること、また、その結果をもとに質の高いガイドライン原案を作成することを目標とする。現在、データ分析は順調に進んでいることから、実現可能な目標であると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画では、2023年度内に作成したガイドライン原案に基づき、2024年度は質的研究の有識者へのフォーカスグループインタビュー(FGI)を実施してガイドラインの妥当性を調査し、その結果を踏まえてガイドライン修正版を作成する予定であった。しかし、ガイドラインの原案作成を2024年度の目標とすることに伴い、ガイドライン有用性評価に関する研究計画を以下のように変更することとする。 当初の計画では、2025年度、2026年6月頃までに研究活動終了予定の研究チームに、ガイドラインを使用して研究を実施してもらい、2026年度、当該研究チームにFGIを行ってガイドラインの有用性について調査し、ガイドラインをブラッシュアップする予定であった。この計画を変更して、2024年度に実施予定だった質的研究の有識者へのFGIを2025年度に実施し、ガイドライン原案の妥当性調査に加えて有用性調査も行なう。そして、最終年度である2026年度は妥当性調査と有用性調査の結果を踏まえてガイドラインのブラッシュアップを行なうこととする。 なお、当ガイドラインを実際に使用してガイドラインの有用性を評価する試みは、2026年度に新たな研究として科研費に申請し、2027年度から実施する計画である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
オンラインで無料または安価で入手できた文献が予定よりも多く、文献複写代が残ったことが次年度使用額が生じた理由である。 次年度はガイドライン原案の作成にあたり、英語文献を入手する必要がある。円安の影響で英語の文献代が高騰しているため、今年度の残額を文献代として有効に活用する予定である。
|