研究課題/領域番号 |
23K09908
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
比嘉 肖江 富山県立大学, 看護学部, 教授 (90290147)
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研究分担者 |
比嘉 勇人 富山大学, 学術研究部医学系, 教授 (70267871)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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キーワード | 医療者の悲嘆 / グリーフケア / レジリエンス |
研究実績の概要 |
2023年日本死の臨床研究会年次大会で「ペリネイタル・ロスに関連した医療者の悲嘆についての文献レビュー」を発表した。 【目的】2012年以降の日本における「ペリネイタル・ロス」に関する研究の動向と課題を明らかにすることを目的に文献検討を行った。 【方法】医学中央雑誌Webを使用し、2012年~2022年6月までに掲載された文献より、研究目的に合致すると確認した原著論文を分析対象とした。 【結果】「助産師・看護師および医療施設」を対象とした研究は12件抽出され、このうち、助産師の感情やレジリエンスに関する研究が大半を占め、死産を経験した母親を援助する助産師の感情には、死への恐怖と悲しみ、傷ついた母親の思いとの隔たり、母親への共感が生み出す苦悩などがあり、助産師は自身の感情表出に戸惑いながら援助を行っていた。また、看護師には、チームに対して寄り添いや共感、見てくれていることの実感、声かけ、タッチングなどの精神的ケアが求められていた。 【考察】2011年以前は、助産師・看護師自身のケアが注目されていなかったが、助産師・看護師も当事者と同様に悲嘆を経験し、悲嘆が緩和されないまま次の対象に関わることで悲嘆が慢性化する可能性があることが報告され、助産師・看護師もグリーフケアの対象である認識が高まったと考えられる。ペリネイタル・ロスを経験した助産師・看護師は、個人で体験を振り返り、感情の整理を行うだけでなく、チーム全体で感情の表出を促し、受容するなどのケアが重要であり、個人とチームの相互の取り組みが、悲嘆を乗り越えるレジリエンスへとつながる一助になるといえる。また、助産師は、現任教育においてペリネイタル・ロス時の精神的ケアについて学習の機会を設けることが望まれる。さらに、社会的な課題として、ペリネイタル・ロスを体験した助産師・看護師同士が思いを語ることができる場を設けることの必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、喪失体験により看護師が被る職業性悲嘆(患者の死に対して抱く悲嘆)に対する「職業性悲嘆」支援モデル(メンタル・スピリチュアル支援)を開発することである。 初年度第1段階の計画は「職業性悲嘆に関連する文献検討」であり、2023年に「ペリネイタル・ロスに関連した医療者の悲嘆についての文献レビュー」を発表した。 第1段階の計画には、悲嘆関連語の概念分析が含まれていたが、2024年以降に持ち越した。そのため、初年度の進捗状況は「おおむね順調に進展している」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度に続く文献検討(概念分析)を重ね、令和6年度は調査研究「患者との死別経験における看護師のストレス関連成長とスピリチュアリティの関連性」を企画している。すでに、本施設の倫理審査委員会の承認を経て看護師700人を対象に研究協力を依頼し、その回答データを回収中である。 令和7年度以降において、本調査研究の結果を踏まえた質的研究を行い「職業性悲嘆」支援モデルの仮説モデルを作成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度の旅費には研究発表者として研究統括者分を計上していたが、発表会には出席できなかったため、20万円ほどの次年度使用額が生じた。なお、当日の発表は、研究協力者(室日菜子)が行った。 令和6年度においては、研究協力者を含めた研究発表のための旅費を計上する予定である。
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