研究課題/領域番号 |
23K09934
|
研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
築田 誠 兵庫県立大学, 看護学部, 講師 (40617594)
|
研究分担者 |
小橋 昌司 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (00332966)
伊東 由康 兵庫県立大学, 看護学部, 助教 (10867667)
本田 順子 兵庫県立大学, 地域ケア開発研究所, 教授 (50585057)
野島 敬祐 京都橘大学, 看護学部, 准教授 (70616127)
藤田 大輔 兵庫県立大学, 工学研究科, 助教 (90907867)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
キーワード | 人工呼吸器 / インシデント / 安全管理 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、人工呼吸器ケアを実践する看護師を支援する安全管理システムの学術的基盤構築である。日本医療機能評価機構においてインシデント事例はヒヤリハットを含めると年間200件程度集約されているが、標準化やインシデントの定義等、統合型インシデント報告システムの基盤がいまだに統合されていない。今年度は、一般病棟で発生した人工呼吸器関連の医療事故報告の中で当事者を看護師とし、キーワードを人工呼吸器として検索した。これらの事例の中で、看護・管理上のインシデントに限定し、事例内容ごとに分類し、記述統計、KH-Coderを用いて頻出語、階層的クラスター分析より関連する要因や状況を抽出した。検索より536件が抽出され、人工呼吸器装着中の患者に対する看護・管理上のインシデントは236件だった。内容では抜去事例は117件、回路の接続外れは52件であった。対応分析では、「抜去・体位変換・再挿入」「挿管・応援・鎮静」などが抽出語として確認された。階層別クラスター分析によって5クラスターに分類され、その中の“インシデント発生前の状況”の頻出用語は、「体位・上肢・抑制・鎮静・対応」であった。インシデント事例に関しての詳細な状況はテキストデータとして記載されていた。抜去事例に関しては、抜去予防のために上肢の抑制や鎮静など何らかの対応をしている上での事例が多いことが考えられた。看護師は、抜去や接続外れの発生を予測し、安全管理をする上での要因の存在は認識していることがテキストデータより予測できた。ただ、現状のレポートでは、状況の詳細を記載する書式が定まっておらず、テキストマイニングによる解析には限界があった。インシデントの予測や具体的な予防策を講じるためには、報告対象となるインシデントの定義、報告する内容、報告する患者情報、医療従事者情報の範囲が標準化されることを目的とした研究開発が必要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の計画は①インシデント分析に関する既存の文献の系統的なレビューを行い、その分析手法、選定方法、問題解決の導出法を抽出すること、②JCSQHCおよび研究協力施設より人工呼吸器に関連したインシデント事例を収集し、その現状と要因を整理することであった。既存データベースからの事例と、その傾向を分析し、その結果を学術集会へ発表したことからも、おおむね予定通り進行しているといえる。ただ、予想以上に医療事故に関連するプラットフォームの基盤構築は困難で、次年度以降の研究方法の検討が必要である。
|
今後の研究の推進方策 |
医療におけるインシデントの大半は、直接関与した医療従事者の人的要因によって説明するリニアモデルによるアプローチでは説明が難しいとされる。医療においては、刻々と変化し続ける周囲の状況に人々が適応し、複雑に動的に関わり合いながら職務を果たそうとする中で、インシデントが生じることが多く、複雑適応系のアプローチで説明する必要がある。このような状況の中で、有機的な情報をプラットフォームとして統合的に集約・活用する学術基盤を確立するため、報告対象となるインシデントの定義、報告する内容、報告する患者情報、医療従事者情報の範囲を設定した上で、プロスペクティブなデータ収集・分析を実施しする予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
自然言語処理と機械学習により、インシデントモデルを開発する。したがって、高度な分析処理が可能なワークステーションと分析用のソフトが不可欠である。しかし、今年度のデータを俯瞰すると、予測モデル・画像・動画を分析・作成するためのワークステーションの購入モデルを検討する必要があり、次年度に延期することとした。
|