研究課題/領域番号 |
23K10053
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
駒田 陽子 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 教授 (40451380)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 産後うつ / 睡眠 / 社会的ジェットラグ / 睡眠関連呼吸障害 / アプガースコア |
研究実績の概要 |
妊娠に関連した解剖学的、生理学的、ホルモン学的因子は妊娠の様々な段階で起こり、睡眠問題を引き起こす。また、出産後の女性の30~50%が産後3~5日の間にマタニティブルーズを、10~20%の女性が出産後4週間から12ヶ月の間に大うつ病エピソードを呈する。妊娠中の睡眠問題と産後うつおよび分娩時の児の健康状態との関係は日本人女性において明らかでない。本研究では、睡眠の質低下、睡眠時間の短さ、不規則な睡眠、日中機能障害、睡眠関連呼吸障害などの睡眠障害が産後うつや分娩時の新生児有害転帰と関連するという仮説を立てた。 周産期女性(n=683、30.54±5.11歳)を対象に前向き研究を行い、Pittsburgh Sleep Quality Index(PSQI)とBerlin Questionnaireを用いて妊娠中の睡眠問題を、Edinburgh Postnatal Depression Scale(EPDS)を用いて分娩後の抑うつ症状を、Apgar scoreを用いて分娩直後の新生児状態の臨床徴候を評価した。 産後うつを呈した者は呈さなかった者に比べて、妊娠中のPSQI総得点、睡眠の質、睡眠困難、日中機能障害が有意に悪かった。また、妊娠中期の社会的ジェットラグが有意に大きかった。妊娠後期のPSQIスコアは、関連交絡因子や自己報告による生涯うつ病を調整した後でも、分娩後1ヵ月の産後うつ病症状と有意に関連していた。出生5分後のアプガースコアは、平均値は正常範囲内であるものの妊娠中期・後期において睡眠関連呼吸障害有群の方が睡眠関連呼吸障害無群よりも有意に低かった。 本研究により、妊娠中の問題は産後うつに影響することが明らかになった。妊娠中の睡眠関連呼吸障害は分娩のリスクにつながる可能性がある。母親の精神的健康と安全な分娩を確保するために、妊娠中の睡眠の健康に注意を払うべきである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、妊婦を対象として睡眠問題と産後うつとの関係を明らかにすることを目的として調査を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、データのクリーンアップと変数の算出、各指標間の関連について解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査実施にあたり数回の出張を予定していたが、現地病院スタッフの助けを借りることができたため、出張旅費が予定よりも少なく済んだ。また、調査データの入力やデータクリーンアップは外部委託せず研究室内のスタッフで行ったため経費が発生しなかった。現在データ解析はRおよびPythonを使用しているが、今後有料のソフトウェアを購入したいと考えている。また、論文を投稿中であり論文掲載費用が発生する予定であり、これらの経費にあてたいと考えている。
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