研究課題/領域番号 |
23K10269
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研究機関 | 大分県立看護科学大学 |
研究代表者 |
秦 さと子 大分県立看護科学大学, 看護学部, 教授 (10443897)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | デジタル機器 / 嚥下機能 / 嚥下口腔期 |
研究実績の概要 |
デジタル機器の使用実態と嚥下機能との関連を明らかにすることを目的に、過去に嚥下機能障害の診断を受けたことがない20歳代の男女50名を対象(男25名:22.9±2.2歳、女:21.2±0.4歳)に、頭部前方位角度(頭位角度)、嚥下機能の評価項目として反復唾液嚥下テスト(RSST)、喉頭挙上時間、唾液分泌量、舌圧、頬圧、口唇閉鎖力、嚥下時の自覚症状を測定した。デジタル機器の使用状況は、対象機器をパソコン、スマホ、タブレット、その他とし、1日の使用時間を1週間記録してもらった。結果、頭位角度と嚥下機能項目の比較では、舌圧・頬圧・口唇閉鎖力について男性の方が有意に高い値を示したが、それ以外で有意な差は認めなかった(p<.05)。頭位角度に関しては、RSSTにおいて全体と女性でやや強い負の相関、喉頭挙上時間について女性でやや強い正の相関、口唇閉鎖力について全体でやや弱い負の相関を示した。嚥下時に自覚症状があると答えた割合は、口腔期32%、咽頭期62%、食道期26%であった。「スマホ使用時間と喉頭挙上時間」との間、「デジタル機器総使用時間と喉頭挙上時間」の間でやや弱い正の相関を示した。男性のデジタル機器総使用時間と喉頭挙上時間との間にやや強い正の相関、女性のPC使用時間と頬圧間で負の相関を示した。頭位角度は先行研究からストレートネック状態ではなかったが、嚥下機能の頬圧と口唇閉鎖力が弱い傾向を示した。デジタル機器の使用時間は、R3年度総務省の20歳代の調査結果よりも長く、特に女性はデジタル機器の使用時間の長さが嚥下口腔期に影響している可能性が考えられた。実際、嚥下口腔期で自覚症状があると回答した人は、7年前に実施された同世代の結果(秦,2016)より約20%増加していた。そのため、今後はデジタル機器使用時の筋活動に着目し、嚥下機能への影響を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、デジタル機器の使用状況と嚥下機能との関連について検証した。この結果に基づいて、次年度の具体的計画につながっている。
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今後の研究の推進方策 |
デジタル機器の1日における使用時間が長い20代の男女に対し、デジタル機器使用中の頬筋や口輪筋等の筋活動状況と嚥下機能を測定し、デジタル機器使用中に嚥下機能に関連する各器官への影響を検討する。また、2023年度の成果について学会発表を行う予定。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響から、感染状況に注意を払いながら研究を実施した。当初予定対象者数60人に対し50人に調査協力を得ることができた。また、感染予防も考慮して、一部の研究計画を修正して実施したため費用が抑えられた。そのため、2023年度に予定していた内容の一部を含めて2024年実施予定を見直して実施するため、2023年度の費用を2024年度に充てる予定である。
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