研究課題/領域番号 |
23K10391
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
森山 小統子 鈴鹿医療科学大学, 看護学部, 助教 (30751581)
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研究分担者 |
柳澤 理子 愛知県立大学, 看護学部, 教授 (30310618)
田中 和奈 鈴鹿医療科学大学, 看護学部, 教授 (90511155)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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キーワード | 認知症ケア / ハビトゥス / 技能実習生 / ベトナム人 / 外国人介護人材 / M-GTA |
研究実績の概要 |
【背景】わが国の高齢者ケアを担う介護人材の不足は喫緊の課題となっている。介護技能実習生の受け入れが開始され、これまで以上に日本国内における外国人介護人材が増加し、高齢者ケアの場における多文化化が拡大している。本研究では、介護技能実習生のうち最も多い割合を占めるベトナム人介護技能実習生に焦点を当てている。 【目的】研究1では日本の介護施設における認知症ケア実践や、日本人高齢者や日本人スタッフとの相互作用によって、ベトナム人介護技能実習生がどのような学習や成長のプロセスを辿っているのかを明らかにすることを目的としている。日本の介護施設において認知症ケア経験3年以上を有するベトナム人介護士を研究対象とし、インタビュー調査を実施し、質的に分析を行う。M-GTAの分析方法を用いて、彼らの変容プロセス、成長や学習を促進する要因について明らかにする。研究2では、研究1から見出された内容を活用し、ベトナム人介護技能実習生に特化した認知症ケア教育プログラムの開発と評価を行うことを目的としている。 【意義】出身国、在留資格に応じたきめ細やかな教育を行うことは、外国人介護人材のケアスキルや文化能力の向上に役立ち、日本人高齢者にとっては質の高い認知症ケアの提供につながる。質の高い教育によって、外国人介護人材の長期的な定着にも寄与する。 【2023度実績】 1年目である2023年度は、研究1「日本の介護施設で認知症ケア実践を行うベトナム人介護士のハビトゥス変容プロセス」の研究課題に取り組んだ。主にデータ収集を実施したが、概ね計画通り、研究対象者をリクルートできた。分析を進め、研究対象者数が十分であるか判断する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1「日本の介護施設で認知症ケア実践を行うベトナム人介護士のハビトゥス変容プロセス」の研究課題に対し、データ収集を行った。東海圏内の介護老人保健施設または介護老人福祉施設に勤務し、3年以上の認知症ケア経験をもつベトナム人介護士をリクルートし、60~90分程度の半構造化面接を行った。研究対象者は15名の予定のところ、計11名であった。日本語での会話の負担や語彙の限界を考慮し、ベトナム語の通訳者を帯同し、母国語でインタビューを行った。実施場所は、各施設の代表者と相談し、施設内の会議室等を使用した。インタビュー内容はベトナムでの認知症に対する考え、現在の認知症に対する考え、現在に至るまでの過程でどんな認識や価値の変化があったか、日本人のスタッフとうまく働くために工夫してきたこと等であった。同意を得た上で面接内容をICレコーダーに録音した。 現在、インタビューデータから逐語録を作成している。今後はM-GTAの手法に基づき、ベトナム人介護士が日本の介護施設での体験による変容プロセスを明らかにする。
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今後の研究の推進方策 |
研究1の分析では、「ハビトゥス」という概念を理論的基盤において解釈を行うことになる。「ハビトゥス」は社会学領域で用いられることが多い概念であるが、医療福祉領域における先行研究での活用は少ない現状にある。今後、分析を進めるうえで、概念の定義や意味づけの変遷を理解した上で用いる必要がある。文献レビューまたは概念分析によって「ハビトゥス」をどのように活用していくのか明らかにし、M-GTA分析を行っていく必要がある。M-GTAでの分析を行うにあたり、研究代表者が中心となってデータの解釈に取り組むが、分析方法や解釈についてはスーパーバイズを求め、ベトナム人介護士の独自のプロセスが明らかになるよう検討していく。研究結果について学会発表および論文化し、第2研究へのステップとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究1のインタビュー調査で得られた言語データについて、逐語録を作成するために業者に委託する。その費用として、当該年度にまだ委託できていない分を次年度に行う予定である。また、結果をまとめ学会発表を行うための旅費として使用する予定である。
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