研究課題/領域番号 |
23K10437
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
中原 康雄 帝京大学, 医学部, 准教授 (80595968)
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研究分担者 |
緒方 直史 帝京大学, 医学部, 教授 (10361495)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | リハビリテーション / バーチャルリアリティ |
研究実績の概要 |
バーチャルリアリティ(Virtual Reality: VR)は、これまでの技術的発展にて現実に近い没入感が得られるようになり、リハビリテーション医療の分野においてもVRの活用が始まっている。VRでは主に視覚が主体となるが、人間にはある感覚の情報から、ほかの感覚の情報を補完し認知、解釈する特性があり、周囲を認識する際に得る情報は必ずしも単一の感覚モダリティからとは限らない。視覚以外の異なる感覚からの情報が統合、処理され、これら異なる感覚が互いに影響を及ぼし脳が五感を補完することで、実際には起こっていないことを感じるクロスモーダルな錯覚現象が認知や身体イメージにおいて重要な役割を果たしていることが明らかとなってきている。リハビリテーションを実施するうえで、効果的な訓練法の開発は常に重要な課題であり、本研究の目的は、このVR技術にクロスモーダルを活用した環境で高次脳機能障害に対する訓練が可能となる新しい訓練システムを構築し、その有用性を検討することである。本システムは対象者がヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着してVR空間の中に身をおき、身体の動きをトラッキングすることで、対象者の高次脳機能の訓練を行うシステムである。構築されるVR環境は装着するHMD前面のみに投影される形式とは異なる没入型のimmersiveな環境となり、3D空間を自由に利用した訓練内容の設定が可能となるだけでなく、病室や訓練室といった従来の一般的なリハビリ環境とは異なる3DCGや映像で表現された空間内での訓練が可能となる。インタラクティブな情報を脳にフィードバックすることによりイメージの学習を強化する治療装置を開発し、その臨床的有用性を検証するとともに、本治療装置が運動機能に与える影響について安全性を含めて包括的に検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は没入型ヘッドセットデバイスとなるMeta Questを中心としたVR環境の構築とともに、プログラミングにてVR環境下で作動するリハビリテーションコンテンツ作成を実施した。3D空間を自由に使用することで汎用性のある訓練内容を作成するとともに、脳血管障害に対する訓練など、リハビリテーション医学に基づいた疾患に適した訓練内容を作成。まずはVR空間を生かした半側空間無視に対する訓練を構築し、訓練効果を元に注意障害, 身体失認, 観念運動失行, 観念失行といった他の高次脳機能障害への対応を目指している。
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今後の研究の推進方策 |
没入型VR環境下で作動するVRシステムの構築と開発エンジンを用いてクロスモーダルフィードバックリハビリテーションソフトウェアを開発する。半側空間無視に対してフィードバックを可能とする訓練を構築し、訓練効果をもとに注意障害, 身体失認, 観念運動失行, 観念失行といった他の高次脳機能障害への対応を目指す。脳血管障害などで合併する上肢、手指麻痺機能障害に関してもハンドトラッキングを利用した分離運動の獲得に向けた上肢・手指機能訓練を構築し、構築した訓練プログラムが適切にVR環境下で適切に安全性をもって動作するよう調整を行っていく。開発したシステムを実際の訓練へ適用するとともに、評価バッテリーを用いての高次脳機能障害の変化、評価表を用いてのQOLや心理的要素変化の測定, 解析といった、訓練内容および訓練環境による効果の評価を実施するとともに、VR酔いなどといった副作用の有無に関しての評価を行うことを研究期間内の目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は主にVR環境、リハビリテーションシステム構築に向けて使用。次年度使用額が生じたため引き続き開発したVR用リハビリテーションプログラムを安全に実施するための機器、リハビリテーション効果判定用設備、ヘッドセット使用時に必要となるアイマスクや評価時に必要となる物品、ハードディスクやSDカードなど開発したプログラムデータ保存用の記録メディアなどに使用される予定である。
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