研究課題/領域番号 |
23K10456
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研究機関 | 茨城県立医療大学 |
研究代表者 |
山本 哲 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 助教 (00735334)
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研究分担者 |
山田 亨 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (10344144) [辞退]
河野 豊 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 教授 (10392200)
川口 拓之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (60510394)
平山 淳一郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (80512269)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 近赤外線分光法 / ニューロフィードバック / 運動関連領野 |
研究実績の概要 |
本研究は、近赤外線分光法(fNIRS)を用いて運動時の脳活動をモニタしリハビリテーションに応用する技術(fNIRSニューロフィードバック;fNIRS-NFB)に有用なマーカーを同定し、同システムの確立を目指す。確立したシステムを脳卒中患者に用い、fNIRS-NFBを行うことで、本システムの、運動麻痺の改善への寄与を検証する。 2023年度は、脳卒中患者において実施可能な運動課題の選定を行い、健常者を対象に脳活動計測を実施した。 脳卒中後の神経活動の回復を評価するためには、回復の初期段階で実施可能な課題を選択する必要がある。手の屈伸は最初に観察できる機能回復であるため、回復過程を評価する有望な課題である。fMRIでは、動作の強さによって神経活動の振幅が変化することが報告されているが、機能的近赤外分光法(fNIRS)では、動作と神経活動そのものの相関は報告されていない。これを調べるため、本研究では健常者を対象に、異なる課題強度でfMRIとfNIRSの同時測定を行った。運動課題は、右手と左手を握る動作であった。運動強度は最大握力の20%と40%に設定した。測定中、握力は記録された。その結果、握力は20%課題よりも40%課題の方が有意に高く、これは左手と右手の両方で起こった。運動皮質では、fMRIにより、BOLD信号の変化率が、20%課題よりも40%課題の方が大きいことが示された。fNIRSにより、課題開始から9秒後のデオキシヘモグロビン濃度が、20%課題よりも40%課題の方が有意に低いことが示された。fMRIと同様に、fNIRSでも運動強度が高いほど、課題誘発血行動態反応は大きかった。fNIRSで手の握りの動きを測定することは、脳卒中運動麻痺の神経回復過程を評価する方法となりうることが示唆された。 本研究の成果は、令和6年6月の国際学会にて発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の計画と、実施した内容に一部異なる点があるものの、fNIRSデータ計測の実施と、成果の国際学会への演題応募が実施できたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究 (1)若年者を対象とした場合、毛髪がプローブと頭皮の間に位置することによりノイズが生じるため、対応方法を検討する。(2)付属病院のMRIを用いて、脳卒中患者の脳活動を計測できる体制を整備する。整備後は測定を行い、fNIRSプローブ装着のための事前情報とする。(3)脳卒中患者のfNIRS計測を行い、1か月毎の経時データを測定する。fNIRSデータと同時に、運動麻痺の重症度等の機能的障害のデータを収集し、損傷領域と合わせて比較することで、機能回復に伴う半球内外の抑制状態について観察する。このことを通じて、脳卒中運動麻痺患者において回復に資する関心領域を同定し、フィードバックを行う関心領域を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
fNIRSプローブ位置が頭部上に配置された位置を正確に同定・記録するために、3Dプローブ一計測システムを導入することを計画していた。令和5年度に実施した計測では、MRI構造画像を用いてプローブ位置の記録が可能な実験環境を整えたため、システムの導入を行わずに同機能を達成することができた。そのため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、翌年度分として請求した助成金と合わせて、国際学会での成果発表費用と、MRI使用料等に充当する予定である。
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