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2023 年度 実施状況報告書

神経変性疾患におけるリハビリテーション治療効果の機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23K10462
研究機関常葉大学

研究代表者

矢澤 生  常葉大学, 保健医療学部, 教授 (20312217)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード神経変性疾患 / 多系統萎縮症 / パーキンソン症候群 / リハビリテーション / オリゴデンドロサイト / 環境エンリッチメント
研究実績の概要

多系統萎縮症(MSA)は抗パーキンソン病治療薬の効果がない進行性の神経変性疾患である。本研究ではMSAモデルマウスとして開発した「CNP-Synマウス」において、環境エンリッチメントを用いてリハビリテーション治療効果を検討した。CNP-Synマウスでは、マウス中枢神経系のオリゴデンドロサイト特異的に、ヒト野生型alpha-synucleinを発現する遺伝子改変が行われ、筆者らが開発した動物モデルである。このマウスでは脳萎縮や運動機能の低下、さらに中枢神経の神経細胞の脱落が観察された。筆者らは神経細胞の変性とオリゴデンドロサイトに蓄積するalpha-synucleinが異なることを明らかにした上で、MSAモデルマウスに起こる神経変性の機序を解明した。加えてCNP-Synマウスの脳初代培養実験より、alpha-synucleinを調整する因子や結合するタンパク質の存在を明らかにし、治療法の開発に向けて大きく前進した。そこで本研究においては、MSAの神経変性に対する、リハビリテーション効果を検討することを目的として、環境エンリッチメントによる運動機能への影響を評価した。MSAモデルマウスの運動機能の評価としてワイヤーハンギングテストを実施し統計学的な有意差を検討した。ワイヤーハンギングテストとは、マウス個体の前腕によりぶら下がらせて、落下するまでの時間を測定し、運動機能を反映する指標とした。昨年度までの評価では環境エンリッチメントによる運動機能への効果の結果では有意差を認めなかったが,環境エンリッチメントの種類や期間を工夫することにより,今後、有効な効果が得られる可能性を示した。さらに、マウスの飼育環境を十分に解析して、より環境を改善できる工夫をしマウスの運動機能の評価を厳密に行なった。本研究では,理学療法だけでなく作業療法の両面からマウスのリハビリテーションを科学的に分析した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

マウスは遺伝子改変のための実験動物だけでなく、多くの研究分野で使用される実験動物であるが、飼育環境による大きく影響を受けることが明らかである。本研究ではマウス個体の特徴を活かした研究を行い、第一に環境エンリッチメントとしては主として繁殖用に使用する環境効果因子を選択した。これらを一種類だけでなく、複数の因子を併用することにより効果的な環境エンリッチを行なった。次に、本研究はマウスの飼育環境についての研究であるために、飼育環境は十分に吟味して与える影響を均一化することが求められるが、本研究で実施できる飼育スペースが限られており十分な繁殖や広いスペースの飼育が実施できない。このために同じ条件により実験を2回以上実施する計画である。さらに、マウスの運動機能ではヒトと同様に個体差が大きく存在する。このために、雌雄を研究対象として区別して運動機能評価をした上で、研究結果をまとめる。ワイヤーハンギングテストは、マウス運動機能を評価する上で、簡便で試験場所を選ぶことのない評価方法であり、また、他の運動機能評価方法の比較においても、マウスの運動機能を比較する上で重要な検査であることがわかっている。本研究ではマウスの特性を可能な限り理解し、マウス中枢神経における神経変性に関与するタンパク質への影響を解析した。マウスの飼育環境はヒトの神経変性疾患における生活環境に置き換えて外挿することができることから、リハビリテーション効果の検討には十分に応用が可能な研究方法であると考える。

今後の研究の推進方策

飼育環境に敏感なマウスでは、環境因子を整えることを最優先の課題として研究を進める。また、個体差による運動機能評価における誤差をできる限り少なくする必要がある。特に、雌雄により実験結果が異なる可能性を排除するために、今年度から雄マウスに限定して実験を進めている。このために、個体数確保には時間と労力がかかるが、実験の精度を上げる上で必要と判断した。次に、ヒトにおけるリハビリテーションと同等の影響を与えることが予想される環境エンリッチメントについて、複数の繁殖用に使用する環境効果因子を選択した。環境エンリッチメントは単独の効果ではなく、複数の因子を組み合わせて併用することにより効果的な環境エンリッチ効果を得ることができると考えた。マウスのケージの環境スペースは限られており、この中でより効果的なリハビリテーション治療が行えるように環境因子を整えた。環境因子としては、飼育ケージなどの受動的な環境因子に加えて、マウスが能動的に前足を使う動作に注目して、ヒトのリハビリテーション(作業療法)と比較検討した。

次年度使用額が生じた理由

本研究の実施においては、マウスの飼育環境や能動的な環境因子は大きな影響おを与えることが予想される。実施する飼育施設においてはマウスの飼育スペースに制限があることより、実験を2回繰り返して行い、実験期間も2年間に分けて実施している。また、このための予算に入れたが十分な実験補助者が確保できないために、人件費を使用せずに協力する学部学生とともに実験を実施しているために、研究の進捗に遅れが生じている為。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2024 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 図書 (1件)

  • [国際共同研究] ペンシルベニア大学/CNDR(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      ペンシルベニア大学/CNDR
  • [図書] 生活習慣病ノート第2版 電子版2024

    • 著者名/発表者名
      矢澤生
    • 総ページ数
      54
    • 出版者
      一粒出版

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公開日: 2024-12-25  

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