研究課題
腫瘍循環器リハビリテーションでは、がん患者・担癌循環器病患者の心肺持久力向上や心血管リスク軽減が期待されているが、まだ発展途上である。特に、運動耐容能評価において開発の必要性がある。心臓リハビリでは、精度の高い運動耐容能評価法として心肺運動負荷試験(CPX)が用いられるが、がん患者の特性上合併症や治療に伴う倦怠感などで、実施困難なこともある。申請者は、末梢血マイクロRNAに着目し、急性心筋梗塞症例における検討で、マイクロRNA分子種miR-181cとmiR-484の血中発現量がCPXで判定した嫌気性代謝閾値と最高酸素摂取量(peakVO2)と正相関することを見出した(Prog Rehabil Med. 2021)。本研究では、担癌循環器病患者や化学療法中のがん患者において、末梢血miR-181cとmiR-484による運動耐容能評価の可能性を検証することを目的とした。前向き観察研究で現在までに約30例を登録している。マイクロRNA測定は、症例が集積次第、実施する予定となっている。今年度は基礎データとして、後ろ向き研究で①がん合併循環器病患者における心臓リハビリの運動耐容能への効果、②化学療法中の乳がん患者における運動耐容能に関して調査を行った。①では、がん治療中・サバイバーの循環器患者では心臓リハビリ導入時は低運動耐容能を認めたが、心臓リハビリ参加により有意な改善を認め、QoL向上の可能性が示唆された。②では、CPXを実施した乳癌患者88名を対象とした。%予測peakVO2:84±15%で80%以下32例(低下群)であった。予測peakVO280%以上群と低下群の比較では、低下群で年齢、BMIが有意に高く、高血圧、脂質異常症の併存が多かった。前向き研究では症例を順次登録し、これらを後ろ向き調査の結果を基盤データとして、考察を深めたいと考える。
2: おおむね順調に進展している
現在までに約30例を登録している。検査スケジュールも脱落例がなく、概ね順調と考える。登録と並行して、後ろ向き調査を加えることで、本研究の解析の方向性に示唆があったと考える。
今年度も順次症例登録を行っていく。マイクロRNA測定は測定費用を考慮し、症例が集積程度に応じて実施する予定となっている。中間解析を予定したいと考える。
計画時にマイクロRNA測定費用を当該年度に計上していたが、コストを再検討した結果、より症例の集積で安価になることを考慮し、今年度の計測を見送ったため。次年度以降で測定費用として使用する。
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