研究課題/領域番号 |
23K10493
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
大橋 篤 藤田医科大学, 保健学研究科, 准教授 (30310585)
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研究分担者 |
堀 秀生 藤田医科大学, 保健学研究科, 准教授 (00342113)
中谷 直史 星城大学, リハビリテーション学部, 准教授 (00421264)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ウレミックサルコペニア / アルブミン結合尿毒素 / インドキシル硫酸 / 脱離剤 / 血液浄化療法 / N-アセチル-L-トリプトファン |
研究実績の概要 |
インドキシル硫酸(IS)は腎不全患者の血清蛋白質に強固に結合する代表的な蛋白結合型尿毒素であり、細胞内で活性酸素を産生し動脈硬化や腎障害を引き起こす事が知られている。近年、ISが骨格筋に取り込まれ酸化ストレスを惹起し筋委縮(サルコペニア)因子となる事が報告された。ISの排泄機序は腎排泄であるが、透析患者ではISが血清アルブミンと強く結合するため除去能が低く健常者の100倍以上になるため、高効率除去法の開発が課題である。ISと類似構造を有するL-トリプトファン(Trp)は血清アルブミン結合型のISに対し脱離させる効果を持つことが報告された。我々はTrpの代替としてN-アセチル-L-トリプトファン(L-NAT)に着目しTrpと同様にISの競合脱離剤として有用であるか検討した。先ず、透析患者の検査済み血清を集めたプール血清を準備した。このプール血清を体外透析実験で用い、透析回路の動脈側チャンバからTrpまたはL-NATを持続的に添加して、ISの除去クリアランスを比較した。その結果、L-ANTはTrpと同等のクリアランスが得られることを明らかにた。しかし、ISの除去に反し両脱離剤のプール血清濃度は上昇した。TrpとL-NATの構造はISと類似点が多いため、ヒト筋管細胞株を用い筋萎縮への影響与を検討した。その結果、Trp はIS と同様にヒト筋細胞の面積を減少させたが、L-NAT は影響しない事が判明した。よって、透析回路からL-NATを添加すればタンパク質型ISが除去でき且つL-NATは筋委縮を誘導しない事より、透析患者のサルコペニア抑制に有用となる可能性がある事を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ISはアルブミンのサイトⅡに結合しており、L-NATはTrpと同様に蛋白結合ISの競合脱離剤として期待できるが、体外実験の結果ではIS除去能はTrpと差が無く、さらなる高効率な除去効を模索する必要がある。次年度はアルブミン結合ISの除去効率を高める別の方法の検討と血清アルブミンの抗酸化作用など機能的な向上を追求し、透析患者のサルコペニアを軽減させる新たな方法を追加検討する。
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今後の研究の推進方策 |
体外脱離実験によるISの脱離剤としてLNATに着目したがTrpと差が無かった。ISは主にアルブミンに結合しているが、透析患者のアルブミンは酸化ストレスにより著しく酸化修飾されており、抗酸化能が低下している。我々はこれまで酸化型アルブミンを還元型へ転換させる技術を開発しており、透析患者の血清アルブミンの抗酸化能を高めればその構造変化によりISの脱離効果が向上する可能性がある。そこで、L-NTA添加と還元剤をハイブリッドで供添加する体外実験を試み蛋白結合ISの更なる除去と抗酸化機能の向上を図る。また、これらの安全性並びに有効性をヒト筋管細胞を用いて検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
透析患者の血清蛋白質に結合するISの脱離剤としてL-NATを使用したが、その除去効率はTrpと差が無く、更に高効率の除去法の検討が必要である。そこで、次年度は酸化型アルブミンに還元剤を添加し還元型アルブミンへ転換させた際のISの脱離効果を検討する。さらにL-NAとCysの供添加実験を行い蛋白結合ISの更なる除去効果を図る。また、これらの安全性並びに有効性をヒト筋管細胞を用いて形態学的に検証するために研究費を使用する。
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