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2023 年度 実施状況報告書

虚血性筋痛における脊髄神経節マクロファージを介した末梢感作機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23K10556
研究機関金沢大学

研究代表者

堀 紀代美  金沢大学, 医学系, 助教 (40595443)

研究分担者 尾崎 紀之  金沢大学, 医学系, 教授 (40244371)
奥田 洋明  金沢大学, 医学系, 准教授 (40453162)
石川 達也  金沢大学, 医学系, 助教 (00750209)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2027-03-31
キーワード末梢動脈性疾患 / PAD / 虚血性疼痛 / 筋痛 / 痛覚過敏 / DRGマクロファージ / Iba1
研究実績の概要

【目的】末梢動脈疾患(PAD)で見られる虚血性疼痛のメカニズムを明らかにするため、PADラットのDRGマクロファージの増殖、活性化、DRGマクロファージから放出されるBDNFやIL1-βなどの液性因子の同定、それら液性因子の筋の知覚ニューロン興奮への影響について解析する。本年度は末梢神経のグリアに相当する脊髄神経節(DRG)内の知覚ニューロンに浸潤するマクロファージがPADモデルラットで見られる虚血性筋痛に関与するかを調べる。
【方法】全身麻酔下でラットの総腸骨動脈および腸腰動脈を結紮することにより下肢の血流を阻害したPADモデルラットを作成し、ランダルセリット装置を用いて筋の機械的痛覚過敏を、トレッドミルを用いて間歇性跛行の有無を調べた。逆行性トレーサーのFluoro-gold (FG)を腓腹筋に投与して腓腹筋の知覚神経を標識したラットを用いてPADモデルを作成し、筋の痛覚が亢進しているのを確認後、結紮後14日目にL5後根神経節を採取し、Iba1の免疫染色を行った。
【結果】PADモデルラットでは結紮後3週間にわたり筋の圧痛閾値が低下し、また間歇性跛行が3ヶ月以上持続することを確認した。PADモデルラットの腓腹筋の知覚神経の細胞体の周囲ではIba1陽性のマクロファージの発現が認められ、PADモデルではこのDRGマクロファージの増殖が見られた。
【考察】本年度の成果により、PADモデルラットは下肢の血流阻害による筋の痛覚過敏の解析に適していると示唆された。DRGマクロファージの発現増加がPADモデルラットで見られる虚血性筋痛に関与すると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

我々が開発した慢性的な筋の痛覚過敏および間歇性跛行を呈するPADモデルラットを用いて、虚血性疼痛におけるDRGマクロファージの発現について検討し、新たな知見を得ることができた。
本年度はIba1以外のマーカー、例えばCD68などでもDRGマクロファージの評価を行うで組織採取・切片の作成は終えているが最後の免疫染色に至っていない。次年度は免疫染色の実験が中心となるので並行して行いやすく実施する。
また本年度は同時に虚血性の筋痛にマクロファージが関与するか検証するため、虚血によって痛覚が亢進したPADラットにマクロファージを貪食する薬剤(クロドロン酸)を投与してマクロファージを除去し、疼痛行動が変化するか行動薬理学的に調べる実験を開始したが、クロドロン酸は全身のマクロファージに作用して除去するため、投与後、ラットの全身状態の悪化が見られることがあった。これまでの報告を参考にして行ったものの、疼痛評価のために行動実験に正しく応答できる状態を保持できる投与量へと調整することを余儀なくされた。そのため、本年度中にこのクロドロン酸投与実験の結果を示すことは出来なかったが、投与量の調整は終了し、今後実験を進めるので、次年度(令和6)の研究計画に影響を及ぼすことはないと考える。
また、令和6年度に重点的に行うことを計画していたPADモデルのDRGマクロファージの表現型に関する免疫組織学的評価についても着手を始めており、引き続き進める。

今後の研究の推進方策

令和6年度は令和5年度からのクロドロン酸によるマクロファージ除去実験の継続とともにPAD モデルラットの痛覚の変化に増加したマクロファージがどのように関与するのかその分子メカニズムを明らかにする。そのために、PADモデルのDRGマクロファージの表現型、およびP2X4の発現量変化に関する免疫組織学的評価を行う。筋の知覚ニューロンに集積したDRGマクロファージは神経障害性疼痛のミクログリアで報告されるようにP2X4を過剰発現し、活性化してM1型の表現型を示すか検証するために、PADモデルのP2X4の発現の変化およびDRGマクロファージの表現型(M1型もしくはM2型)について免疫組織学的に調べる。筋の痛覚におけるP2X4の発現変化やマクロファージの表現型について調べるため、腓腹筋に逆行性トレーサーFluoro-gold (FG)を投与し、DRG内の筋の知覚神経を標識し、筋の知覚ニューロンに集積するマクロファージついて検討する。
さらに可能であれば、PADモデル動物のDRGマクロファージより放出される液性因子の解析についても着手する。PADラットの活性化したDRGマクロファージからTNF-α、IL1-β、およびBDNF、さらにNGFやVEGFタンパクが放出されるかどうかを検証することを計画しているが、まず初めに先行研究で報告されたTNF-αやIL1-βから開始する予定である。TNF-αやIL1-βのタンパク発現評価はウエスタンブロット法を用いる。

次年度使用額が生じた理由

今年度に実施した実験の消耗品類はおおむね予定通りに購入したが、また未実施の免疫染色に使用する免疫組織染色用抗体や行動実験試薬等が未購入で繰り越し予算を生じた。それら未実施の実験に必要な試薬は令和6年度に購入する。また令和6年度には国内および海外での学会参加を予定しており、特に海外渡航は昨今の円安、物価上昇の影響により、本研究の計画時よりも渡航費用が若干多く必要と見込まれる。再度参加予定の学会を吟味する必要がある。その結果、必要な旅費の不足分に対しこの若干の繰り越し予算に充てる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Combined Experiments with <i>in Vivo</i> Fiber Photometry and Behavior Tests Can Facilitate the Measurement of Neuronal Activity in the Primary Somatosensory Cortex and Hyperalgesia in an Inflammatory Pain Mice Model2024

    • 著者名/発表者名
      Ishikawa Tatsuya、Uta Daisuke、Okuda Hiroaki、Potapenko Ilia、Hori Kiyomi、Kume Toshiaki、Ozaki Noriyuki
    • 雑誌名

      Biological and Pharmaceutical Bulletin

      巻: 47 ページ: 591~599

    • DOI

      10.1248/bpb.b23-00700

    • 査読あり
  • [学会発表] 慢性痛の発生メカニズムの解明と治療を目指して:中枢と末梢の観点から2024

    • 著者名/発表者名
      奥田洋明、石川達也、堀紀代美、尾﨑紀之
    • 学会等名
      第129回日本解剖学会総会・全国学術集会
  • [図書] 関節可動域2023

    • 著者名/発表者名
      堀紀代美 他37名
    • 総ページ数
      330
    • 出版者
      運動と医学の出版社

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公開日: 2024-12-25  

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