研究課題/領域番号 |
23K10561
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
関川 清一 広島大学, 医系科学研究科(保), 准教授 (30363055)
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研究分担者 |
馬屋原 康高 広島都市学園大学, 健康科学部, 教授(移行) (60746395)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 慢性呼吸器疾患 / 呼吸サルコペニア / 咳嗽力 |
研究実績の概要 |
令和5年度では、呼吸サルコペニアを検証するために使用するスマートフォンを使用する咳嗽能力評価システムの精度検証を実施した。対象は,心肺機能に問題のない健常者とし、スパイロメータによる呼吸機能、呼吸筋力および咳嗽力(CPF:Cough peak flow)を測定した。さらにスマートフォン使用による咳嗽音を用いた咳嗽力(CPS:Cough peak sound)を測定した。測定体位は椅座位と背臥位の2姿勢とし、各姿勢において2回測定した。CPS の1回目と 2 回目の検者内再現性(級内相関係数(ICC1.2))は、椅座位 0.697、背臥位 0.883 で2姿勢ともに再現性を認めた。よって,CPS は再現性が高い測定方法であることが明らかとなった。 マスクを装着した状態で咳嗽力の測定可否、マスク装着有無での測定の差、従来法との測定精度の比較に検証した。対象は心肺機能に問題の無い健常者として、マスクあり・なしでの咳嗽力の測定をした。その結果、検者内信頼性についてマスクありなしに関わらず級内相関(ICC)は 2 回測定の平値でも「優秀」と判定された。回測定時の CPS 最大値または平均値を用いて回帰分析を行った場合、CPS値に比べ 3 回測定の CPS 最大値を用いた場合において、マスクありとなし条件における CPS 測定値の相関係数は高値であった。また、最大値を用いた場合の方が回帰式の傾きも比較的 1 に近く、一致性が高い。また、同様の測定を 3 日間実施した結果、CPS の最大値を用いた場合、マスクなし条件においてで2日目に CPS 値は有意に上昇した。原因として慣れが考えられたので、初回の測定値は本来の咳嗽力を過小評価してしまう恐れがあることを認識する必要がある。 以上、本年度の研究により、従来法でのCPF 測定から本研究の CPS 測定の精度を比較すると、健常者を対象としてはいるが測定精度が高いことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は、本研究にかかる使用機器ならびソフトウエアの整備が完了したともに、呼吸サルコペニア検証のための計測ツールの基礎検討を行い、CPSの再現性と妥当性を明らかにした。さらに、呼吸器疾患を合併しない日常生活が自立している高齢者の四肢サルコペニアの特徴的所見を明らかにした。これは当初の研究の目的および研究計画の進行を達成することができた。しかし、対象施設および対象者の選定が十分に進行しておらず、呼吸器疾患患者のデータ取得、解析が十分に進んでいない。その結果、研究成果の公表が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
研究を遂行する上での課題は、本研究の研究施設としての参画と対象者の選定である。市中で生活している呼吸器疾患を有さない日常生活が自立している健常高齢者が通所している施設の責任者ならびに理学療法士からは研究参加の同意を得ている。一方、慢性呼吸器疾患患者の通院医療機関では十分に進んでいない。よって、当該施設の医師ならびに理学療法士と研究を依頼し、研究協力機関との連携強化を図ることで研究参画の具体的合意を得る。また、さらに研究参加施設を増やすよう研究協力の依頼を他施設に行う。今後の研究計画として運動耐容能や機能的活動性といった従来の運動療法および呼吸リハビリテーション効果指標である身体諸機能との関連を追加して検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
非呼吸器疾患高齢者ならびに、慢性呼吸器疾患患者の呼吸サルコペニア検証のデータ取得、解析が途中であるため、次年度使用が生じた。次年度はデータ収集、ならびに臨床所見の解析を完了し、研究成果公表のための学術論文校閲をすすめる。
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