研究課題/領域番号 |
23K10566
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
笠井 史人 昭和大学, 医学部, 教授 (50266095)
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研究分担者 |
永井 隆士 昭和大学, 医学部, 准教授 (10384421)
齋藤 甚 昭和大学, 保健医療学部, 講師 (30838214)
保坂 雄太郎 昭和大学, 保健医療学部, 講師 (80890665)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | プレハビリテーション / 術後合併症 / 術前換気機能 / 術前栄養状態 / 禁煙 / 心理的アプローチ / 摂食嚥下指導 |
研究実績の概要 |
まず初年度の計画は、過去6年間に当院で食道がん手術を受けた患者621例の解析をもとに、適切な周術期介入の効果評価項目を抽出することであった。 周術期におけるプレハビリテーションで術前に身体機能を強化することにより、実際に①術後の合併症予防効果があるか②在院日数が短縮するか、について調査した。プレハビリテーション介入の無い群416例と介入した群205例の2群を後ろ向きコホート調査した。結果、プレハビリテーションにより術後合併症は減少しなかった(p=0.0874)が、術後合併症併発例の術後在院日数が有意に短縮した(p=0.0328)。 次に年齢、性別、BMI、術前換気障害の有無、左室駆出率、術前HbA1c、プレハビリテーション、組織型、術中出血量、手術時間、進行ステージを独立変数として、多重回帰分析を行い、術後合併症患者在院日数への貢献度を分析した。結果は年齢、術後換気障害、術中出血量、プレハビリテーションの順で有意に影響を及ぼしていた。 これらの結果からプレハビリテーションが待機手術患者に効果を及ぼすことが明らかとなり、次にその効率的な手法の開発へ進む足掛かりを得た。その際、プレハビリテーション介入患者の効果判定には在院日数のみではなく、換気機能の関連評価、術中出血に影響する、もしくは術後体力に影響する因子(栄養状況、筋肉量、活動量)などを評価項目として導入すべきであることがわかった。今回のプレハビリテーションには言語聴覚士による嚥下指導が包含されていたことも特筆すべきであり、また検討されなかった禁煙、心理アプローチも重要であることが先行研究で分かっていることから、これらも評価項目に入れる必要があるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、早く、確実に社会復帰させ医療費を削減するため、待機手術患者に、術前、多職種による濃厚なプレハビリテーションを提供する方法を開発することである。内容は術前指導(禁煙、栄養改善、心理アプローチ)・嚥下訓練・呼吸訓練・筋肉量増大訓練であり、それを在宅で行うシステムを開発し効果を検証する。第一番目の研究として、過去6年間に当院で食道がん手術を受けた患者621例のデータベース解析をもとに、適切な周術期介入の効果評価項目を抽出することが計画されていた。こちらは順調に研究を終え、研究論文として公開することができた。 続く研究として、効率的なコンテンツを構築後、eラーニングシステムを利用して在宅患者に提供することが挙がる。そしてその効果は前向きに従来治療群とランダム化比較試験で検証する計画である。 順次進めていく方針で3年計画の一年目としての進行は問題なかったが、続く研究は未だかつて導入の経験がないeラーニングシステムの構築であり、多職種を巻き込んで準備していくことから順調にいかない場合も想定される。またその後には前向き研究が控えており、研究期間内ですべてを達成するには不安も残る。ピッチを上げて進めることのできる部分は急いで工程を進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、①e-ラーニングシステムの構築を行う。LMSはクラウド型として、ITサービス提供会社を利用するが、コンテンツはオーサリングツールを利用して多職種専門職で自作する。②システムの試験運用を行い、問題点を洗い出し、ブラッシュアップする方針である。令和7年度は①食道がんVATS-E予定患者(約100例/年)をランダムに2群に分け、従来治療群とeラーニングで在宅時にもプレハビリテーションを行う介入群に割り付けて効果を検証する。②整形外科の人工膝関節待機手術者にアレンジしたバージョンを約30症例試用してみる。バリエーションとして別分野運用でのデータを蓄積する目的で、観察研究として行う計画である。研究が予定通りに進まなかった場合としては、ICTデバイスの使用を前提としているため、高齢者など研究参加・継続困難患者が多い場合は、整形外科人工膝関節待機手術者のケースから患者対象を拡大する対応を考えたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
分担研究者の情報収集参加学会の延期や使用物品購入の遅れが生じているためで、次年度に使用される計画である。
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