研究課題/領域番号 |
23K10636
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
園生 智広 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (70614866)
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研究分担者 |
河上 和紀 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (00805749)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | alpha-Klotho / exercise |
研究実績の概要 |
研究施設のメンテナンスの関係より、当初予定していた週齢の個体の準備が遅滞していたため、初年度として、前年度までの基盤研究Bで作成していた骨格筋特異的klothoノックアウトマウスを順次繁殖させ実験計画として使用する週齢および個体数確保するために努めた。実際に走運動を行わせたのは、超高齢(2年齢)のマウス数匹を自走回転ホイール付きケージで1ヶ月(20~24days exercise)飼育したのみであり、個体数が十分に確保できていないので次年度に分析予定である。 またまた完全に明らかになっていないが、いくつかの先行研究より筋肉のαklothoは骨格筋線維そのものというよりも筋衛星細胞に発現している可能性が示唆されており、その確認として筋衛星細胞をセルソーターで単離して検討する実験系の確立の準備と、凍結切片によりin situ hybridization(ISH)での発現遺伝子の局在の確認を行った。ISHでの結果、αklothoは筋繊維の細胞膜上や細胞質内ではなくダウンヒルランニングによる損傷部位であろうところに発現している様子が確認されたが、再現性を含め確認途中である。 さらに、筋衛星細胞にのみαklothoが発現しているのであれば、前筋芽細胞株とも表記されるマウスC2C12細胞を用いて、その各分化状況と過剰発現およびノックダウンによる細胞への影響を評価することで筋衛星細胞におけるklothoタンパクの働きを検討することが可能である。そこで、レンチウイルスによるαklothoの過剰発現もしくはノックアウトする遺伝子組換え実験系を準備して遺伝子組換え株を作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画では、前年度までの基盤研究Bで作成していた骨格筋特異的klothoノックアウトマウスの個体数がもう少し確保できている予定であったが、前年度に実施された飼育施設の空調の工事に伴う仮設施設での飼育で繁殖が思うようにいかず、個体数が確保できなかったことにより既に作成していた骨格筋特異的klothoノックアウトマウスに対する強制走運動の実施ができなかったことが第一に理由として挙げられる。 さらに、研究計画では、骨格筋特異的klotho過剰発現マウスの作成を予定していたが、概要欄にも記載した、骨格筋でのαklotho発現部位に疑問が生じたことから、当初予定していたプロモーターとセットでの遺伝子組換えでは、生体内で実際に発現している細胞では無い状態で強制発現させることになると考察した。そこで細胞株や生体から採取した筋衛星細胞を用いた実験で、筋衛星細胞を含む骨格筋全体としてのαklothoの役割をレンチウイルスによる遺伝子組換え実験系で確認することを優先したため当初の予定とは遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
まず強制走運動もしくは自発走運動による骨格筋klothoの発現と加齢の影響については、本年度までに繁殖させた個体が適齢になり次第(高齢な個体から実験数を確保するように)順次実験を行う予定である。 また、骨格筋特異的klotho過剰発現マウスの作成に関しては、C2C12および生体より単離してきた筋衛星細胞を用いた遺伝子組換え実験、骨格筋凍結切片を用いたin situ hybridizationによるklotho遺伝子発現の局在の再現性実験によって、αklothoの発現部位が筋細胞自体か筋衛星細胞かという課題、その細胞での発現のタイミングによっての役割の予測(仮に筋衛星細胞にのみ発現している場合、休止期、活性化して筋芽細胞になるタイミング、損傷部位等で筋線維に融合するタイミング等に影響を及ぼしている可能性)がある程度判明した後に、生体内で実際に過剰発現させることの意義を再度考慮して実施したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に計上していた予算の大部分は、骨格筋特異的klotho過剰発現マウスの作成にかかる諸費用であった。しかしながら、現在までの進捗状況の遅れの理由欄および今後の研究の推進方策欄にも記載した通り、まずマウスC2C12細胞を用いたレンチウイルスによるαklothoの過剰発現もしくはノックアウトする遺伝子組換え実験系で、その各分化状況と過剰発現およびノックダウンによる細胞への影響を評価することで筋衛星細胞におけるklothoタンパクの働きを検討することにした。それゆえ、骨格筋特異的klotho過剰発現マウスの作成の予定の予算とレンチウイルスを用いた遺伝子組換えの試薬の費用の差額が大きく、初年度使用額が予定より少なくなった。 使用計画として、細胞を用いた実験系での結果次第であるが、まず、本来予定していなかった実験なので、初年度に引き続き細胞の遺伝子組換え実験の試薬等に使用する。さらにその結果、当初の予定通り骨格筋特異的klotho過剰発現マウスを作成する意義が認められると考えた場合、外部委託する予定で計上していた予算は残らないので、購入している遺伝子組換えレンチウイルスの試薬を用いるなどした、自前での遺伝子組換えマウスの作成を検討している。
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