研究課題/領域番号 |
23K10644
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
丸井 祐二 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (50791802)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 腎移植 / 体力測定 / 握力 / 筋肉量の維持 / 運動習慣獲得 |
研究実績の概要 |
本研究は、腎移植患者に対する継続的な運動・スポーツ参加を促進するツールと環境づくりからなるプログラムの構築を目的としている。本年度はその必要性の根拠である、腎移植後における慢性腎不全時の活動性の低い生活習慣の影響を調査するため、腎移植患者の体力を把握する調査を行なった。 腎移植者の体力を客観的に測定する方法として、外来診察時に握力を測定した。握力測定にはデジタル握力計TL2 T-1854(TOEI LIGHT社)を用い、左右2回の平均を握力として記録した。 測定した腎移植者は59名で、男性が31名、女性が28名であった。年齢の中央値はそれぞれ、男性61歳(32-80)、女性54歳(28-81)であった。握力の平均と標準偏差はそれぞれ、男性30.1±7.3kg、女性20.8±3.5gであった。平成26年度文部科学省データで示された年齢別日本人平均(例えば男性60-64歳で42.9㎏、女性50-54歳で28.0㎏)と比較し、平均を超えている移植者はそれぞれ男性1人(3.2%)、女性3人(10.7%)であった。また、サルコペニアの基準である、男性28㎏未満、女性18㎏未満の移植者は男女それぞれ、9人(29.0%)、8人(28.6%)であった。 このことより、腎移植者の筋力低下傾向は明らかで、約3割の移植者が、サルコペニア基準を満たすほどの筋肉量の低下を引き起しており、ほとんどの移植者で筋肉量維持の運動ができていないことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要に示した調査を行い、腎移植患者の体力の現状を把握できた。 スポーツ参加を果たしている移植者の現状調査として、令和5年10月に開催された、全国移植者スポーツ大会(開催地:大阪市)を現地見学し、参加した移植者にインタビューを行い、スポーツに参加するに至った環境などを調査した。 World Transplant Games Federationの理事として、令和5年5月にオーストラリア、パースで開催された世界移植者スポーツ大会に出席した。現地で他国から参加した移植者にインタビューを行い、スポーツ参加の環境、家族や周囲のサポート、モチベーション維持のための方策などの調査を行った。 腎移植患者の体力について得られた知見を踏まえ、江東区腎不全患者協会からの依頼を受け、令和6年3月10日に江東区健康プラザにおいて、腎移植、透析患者を対象とし、「透析:・腎移植患者における運動について」と題して、腎不全患者が筋肉量を維持するための運動の必要性をテーマとした講演を行った。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、スポーツ参加経験、運動習慣のある移植者へのインタビューを行い、移植者運動促進のため必要な要素、工夫を調査する。 理学療法士やスポーツ指導者へ協力を要請し、個々の移植患者に適する運動方法を紹介してもらうことによって、より運動に親しみを持ち、その有用性を実感してもらえるよう働きかける。具体的には、外来診察時や、患者会での集会時の指導を計画する。 患者会、少人数の仲間、スポーツクラブ活動などが患者主体で行われるような仕組みづくりを目指す。既存のプログラムやオリジナルコンテンツなどを用いて、運動の仕方の紹介や、仲間づくりの機会を設けることによって運動の動機付けにつなげる。 運動促進プログラムの最終形として、使いやすさも重視したスマホアプリを開発する。このアプリでは、イベントスケジュール紹介、チャット機能による仲間づくりによる運動習慣獲得を目指す。アプリではアンケート機能を持たせて、調査及びその結果によるイベントの評価やアプリのブラッシュアップを行えるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
運動促進ツールとしてのスマホアプリの試作版を外注する予定であったが次年度にずれ込んだため、次年度にスマホアプリ作成費用として使用する。
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