研究課題
本研究は、運動によって腕などの局所へ生じた運動誘発性筋損傷 (Exercise-Induced Muscle Damage: EIMD) に対して、携帯性があり、より早期に、実用性のある評価として局所生体電気インピーダンス計測(Localized-Bioelectrical Impedance Vector Analysis: L-BIVA)を提案するために設計している。健康の維持・増進に運動やスポーツは欠かせないが、久しぶりに身体を動かした後や不慣れな運動にチャレンジした後のEIMDは特に顕著である。そのため、いつでも・どこでも・誰もがより早期にリカバリーへ取り掛かるための基盤となるL-BIVAの標準データ・基礎データの蓄積と実用範囲の明確化を目的としている。今年度は、申請時の計画に従い、L-BIVAとEIMDに関する従来指標との関係を調査した。健常若年男性35名の左腕(肘関節屈曲筋群)を対象とした。参加者は、事前に測定した等尺性最大筋力に対する50%の負荷となるダンベルを用いてエキセントリック収縮局面が強調されたダンベルエクササイズを10回5セット行った。エクササイズの前後と1日、2日、3日、4日、7日後までいくつかの測定を行い経過を追跡した。測定は、多周波電気インピーダンスデバイスや最大等尺性筋力に加え、関節可動域、痛み、周径囲、生化学マーカー(タイチン)等を計測した。その結果、すべての時点で、細胞内および細胞外の水分含有量が右腕よりも左腕の方が増加し、多周波インピーダンスデバイスから得られたインピーダンス、リアクタンス、レジスタンス、およびフェーズアングルといった指標が右腕よりも左腕に変化が確認できた。また、周波数によって異なるが、リアクタンスはEIMDを示すバイオマーカーのタイチンと相関していた。 本成果は現在論文として投稿・査読中である。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の計画に従うことで、被験者のリクルートや実験の遂行、詳細解析までの一連のスキームをスムーズに推進することができた。そのため、当初の計画を半年以上前倒しで進めることができた。スケジュール以外の観点では、EIMDに関する従来指標や今回新たに取得する新規マーカーの項目に関する文献渉猟を済ませていたため、方法論的なノウハウや解析手段に関する検討を済ませた上で実験をスタートさせることができた。解析結果も仮説を指示する形であったため、論文化のためのアクションを計画的に進めることができている。こうした理由の積み重ねにより当初の計画以上に進展している。
当該年度得られた知見については今後も学術雑誌を中心に公表することへ優先順位を置き、内外に広く情報を発信していく。加えて、今後の研究については、当初計画に従い、年齢や性差による影響について検討する。具体的には、これまでは若年男性にてデータを取得したため、1)男性の対象年齢範囲を拡大すること、2)若年女性を対象に追加する、3)女性の対象年齢範囲を拡大する、といった手順で研究を推進する。先行研究によると若年男性に比べて上記の特に2)および3)は月経やホルモンバランスの影響などによりいくつかの項目に異なる反応が生じることも報告されているため、これらを考慮した測定項目の追加についても検討しながら慎重に実験を推進する予定である。
<理由>物価の高騰を受け、計画段階の見積もりよりも予定していた製品が高値になった影響で一部製品を変更したため残額が生じた。また、人件費・謝金については集中的なデータ取得が叶ったため予定を一部変更した。以上の理由により、差額が次年度使用額となった。<使用計画>追加の詳細なデータ解析のために用いることを計画している。
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すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)