研究課題/領域番号 |
23K10676
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
千葉 直樹 中京大学, スポーツ科学部, 教授 (20389662)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 運動部活動 / オーストラリア / 外部委託 / 企業版ふるさと納税制度 |
研究実績の概要 |
2023年度は先行研究の検討を行うとともに、国内外での調査に向けて準備を行った。本年度は、オーストラリアのZ社という民間企業による体育授業や部活動への外部委託に関わる事業内容と課題について調査を行った。Z社の2名のディレクターに各1時間30分程度の専門家インタビューを2024年2月に行った。この会社は、1994年に元体育教師が設立し、2004年から全国展開をはじめ、豪州に36か所の事業所がある。Z社の事業内容は、就学前プログラム、体育授業の指導、休日プログラム、部活動の指導等である。豪州の小学校には必ずしも体育教師が配置されておらず、プールも少ないために、Z社のような民間企業が小学校の体育授業や水泳の授業等を外部委託することが一般的に行われていた。Z社の課題は、学校のカリキュラムに合わせたスポーツ活動を提供することと、専門性の高い人材の確保をすることであった。また年度末に日本のスポーツ関連企業Y社の担当者2名を対象に専門家インタビューを行った。Y社では、学校部活動支援事業を行っており、民間指導委託型モデルと地域部活動型モデルの二つの方法で教育委員会や学校を支援していた。Y社は11か所で50校にわたる121部活動を支援していた。この企業は、教育委員会とスポーツ指導者のコーディネート業を行っている。しかし、本来の目的は、部活動の支援を通して地域のまちづくりに貢献し、スポーツに関連した情報を蓄積し活用することであった。さらに、Y社は沖縄県うるま市と連携し、中学校部活動の外部指導者の謝金等を賄うために企業版ふるさと納税制度を推奨していた。この制度は、地方都市で財源の限られた自治体でも外部指導者の謝金を確保する上で有効な仕組みであった。しかし、企業版ふるさと納税制度では、年度ごとに決算を行うために、長期的な見通しを立て、様々な目的のために納税額を使うことが難しいという課題があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた大阪市中学校部活動に関する調査は、自治体の担当者の都合を考慮して2024年度以降に行うように変更した。代わりにスポーツ関連企業のY社担当者への専門家インタビューを行うことができた。オーストラリアのZスポーツへの調査は、予定通り行うことができた。また運動部活動に関する国内外の先行研究を読み、先行研究の要約をすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、2024年7月に日本スポーツ産業学会でオーストラリアのZスポーツの外部委託の事例について報告する。また2024年10月に東アジアスポーツ社会学フォーラムでY社の学校部活動支援事業の内容と課題について報告する。2024年7月に愛知県豊田市で行われている部活動コーディネーターを生かした部活動支援事業について調査を行う。9月に岐阜県多治見市の「こいずみ総合クラブ」等関係者への調査を行う。2025年3月には、予定を変更して、イングランドの民間スポーツクラブ視察と調査を行う。私は、2025年9月から2026年8月にかけて在外研究員としてオーストラリアの大学で研究活動を行う予定である。そのため、この期間にオーストラリアとニュージーランドを拠点とするZスポーツの事例をより詳細に調査するために調査の予定を変更する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は、2023年10月に大阪市立中学校部活動指導員と合同部活動の視察と関係者への調査を行う予定であった。しかし、受け入れ先自治体の担当者の都合が合わなかったために、次年度以降に調査を行うことになった。そのために予定していた調査旅費やテープ起こしの人件費などを使用せずに次年度使用額が生じた。2024年度に予定した調査を行い、経費を執行する予定である。
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