研究課題/領域番号 |
23K10733
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
中村 康雄 同志社大学, スポーツ健康科学部, 教授 (00323957)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 厚底シューズ / ランニング動作 / 3Dプリンタ |
研究実績の概要 |
陸上の長距離におけるランニング動作は,下肢を酷使する.そのためパフォーマンスの向上に加え,負担の軽減が強く望まれる.それらのニーズに応えるため,技術的に進化したランニングシューズが開発されている.とくに弾性素材と厚いミッドソールを組み合わせた厚底ランニングシューズが現在の主流となり,厚底ランニングシューズ使用者の陸上競技長距離種目の記録も向上してきている.しかし,厚底ランニングシューズを着用したランニング動作の力学的メカニズムは未だ明らかではない.そこでこの研究では,ミッドソールの硬さと弾性素材の有無が異なる厚底ランニングシューズを着用した際のランニング動作を測定し,下肢の動作を運動学的,動力学的に評価することを目的とする.この試みから,厚底ランニングシューズの機能が,ランニング動作に与える影響を評価する.当該年度は,硬いミッドソールのみ,硬いミッドソールに湾曲したカーボンプレートを挿入,柔らかいミッドソールのみ,柔らかいミッドソールに湾曲したカーボンプレート挿入した4種類のシューズを作成した.これら硬度2水準、カーボンプレート挿入の有無2水準に対する2要因において,下肢関節のバイオメカニクス変数を評価した.結果から,硬度の低いミッドソール素材の使用,および湾曲したカーボンプレートの挿入は足関節の力学的負担を軽減することが示唆された.以上から厚底ランニングシューズの特長である硬度の低いミッドソール素材の採用,および湾曲したカーボンプレートの挿入によるランニングのパフォーマンスに対する力学的な利点が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に作成したミッドソール素材は,硬いミッドソールにはTPU(Thermoplastic Polyurethane)フィラメント(Shore A: 95),柔らかいミッドソール素材には改良版TPUフィラメント(Shore A: 85)を使用した.硬度の異なる厚底ランニングシューズとさらにそれらにカーボンプレート挿入したシューズをそれぞれ着用した時の身体動作を計測し,接地時間,ステップ頻度,右脚ステップ長,床反力,右下肢関節の関節トルクを評価したことから,上記の区分とした. ただし,当初の計画では,長い距離を走った場合の変化も評価するためトレッドミルを用いたランニング動作も測定する予定であった.本研究においてランニング動作中の床反力も重要である.そこで床反力を計測できないトレッドミルを用いてランニング動作を計測し,その後運動データから床反力の推定を行ったが十分な制度が確保できなかった.また当施設に設置された床反力計付きのトレッドミルも用いたがランニング動作中の床反力測定の精度に制約があることが明らかとなった.そのため,床反力計を配置した約20 mの直送路における走動作のみを計測した.この測定から結果を得ることができたことから,引き続き床反力計を配置した直送路により測定を継続する.
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今後の研究の推進方策 |
2年目以降も床反力を配置した直送路により走動作を計測する.また厚底ランニングシューズがそのソール形状にあわせて前方に転がるシーソー効果を評価するために,より詳細な解析を行う. 初年度に利用したフィラメントは比較的硬い素材であった.そのため,硬いミッドソールが,市販のシューズと比較して硬すぎたと考えられる.柔らかいミッドソールは,市販のシューズ程度の硬さが得られた.そこで,比較対象としてより柔らかいフィラメントを用いてミッドソールを作成し,さらに硬さが低いシューズの評価を実施する予定とする.
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次年度使用額が生じた理由 |
非常に柔らかいゴム素材のフィラメントが確定できず購入できなかったため,次年度使用額が生じた. 2年目においては,利用する3Dプリンタと非常に柔らかいフィラメントの目処が立ったため,フィラメントの補充に充てる.また引き続き,反射マーカの補充にも充てる.
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