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2023 年度 実施状況報告書

教育学的リズムダンスの創作:発達認知科学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 23K10771
研究機関相模女子大学

研究代表者

山本 絵里子  相模女子大学, 人間社会学部, 講師 (50572202)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワードダンス / ことば / リズム / 乳児 / 認知発達 / 身体教育
研究実績の概要

本研究では、乳児期の原初的ダンスと「ことば」の発達的関係性を検討し、その成果から動きのリズム育成ダンスを構築することを目指す。具体的には、下記の3つの目標を達成する。【目標1】として、乳児期の動きのリズムと「ことば」の発達の関係性を検討する。【目標2】では、目標1の発達認知科学的成果に基づき「動きのリズム育成ダンス」を創作する。【目標3】では「動きのリズム育成ダンス」の教育学的効果を行動と脳活動のレベルから検討する。これらの目標を達成するために、本研究計画では2つの研究項目を実施する。【研究1】は乳児期の動きのリズム表出と「ことば」の発達の関係性に関する縦断的研究である。【研究2】は「動きのリズム育成ダンス」の教育学的効果に関する発達認知神経科学的研究である。
2023年度は、【研究1】に関する2つの研究を行った。研究1-1では、動きのリズムを分析するための手法としての動きのリズム譜の有用性を検討した。この研究では、四単位方式により創作された舞踊作品を対象として、動きのリズム譜を作成した。その結果、動きのリズム譜が創作舞踊作品のリズム構造を記述するために有用であることが示唆された。研究1-2では、乳幼児の自由遊び場面におけるダンス行動の収集を開始し、動きのリズム譜を用いて分析した。その結果、乳児のダンスの構造を分析する一つの方法として、この「動きのリズム譜」が有用であることを確認した。
【研究2】に関しては1つの研究を行った。研究2-1では、テレビを代表とする映像メディアによるダンスの提示が子どものダンスの発達にどのような影響を与えるのかを検討した。本研究では、テレビ視聴中の乳児の行動を縦断的に計測し、ダンスの獲得におけるテレビ視聴が果たす役割について検討した。本研究の結果、映像メディアによるダンスの長期的な視聴が乳幼児のリズム運動を引き起こすことが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、乳児期の原初的ダンスと「ことば」の発達的関係性を検討し、その成果から動きのリズム育成ダンスを構築することを目指している。2023年度は、当初予定していた研究計画を遂行するために研究環境と分析環境を整えた。また、研究を開始し、3つの主要な結果を得た。
まず、研究1-1では、乳幼児の動きのリズムを分析するための「動きのリズム譜」の有用性を明らかにした。また、研究1-2では、乳児のダンスの構造を分析する一つの方法として、この「動きのリズム譜」が有用であることを示した。さらに、研究2-1では、映像メディアによるダンスの長期的な視聴が乳幼児のリズム運動を引き起こすことを明らかにした。2023年度の研究の成果は、動きのリズム育成ダンスを創作するためのダンスの発達モデルを提供する上で大変重要であると考える。また、ダンスの教育学的効果を検討するための実験手続きを確認することができた。
当初の予定では、研究計画の研究1で、生後8から10カ月の時点と生後18カ月の時点で、乳児の遊び場面における①身体の動きと②音声を計測する予定であった。乳児の身体の動きのデータは想定どおり収集することができたが、姿勢推定解析ソフトで解析するためには撮影環境(画角や解像度)を調整する必要があることが明らかになった。また、乳幼児の音声の表出は非常に少なく、収集するのが困難であった。今後、自由遊びの測定環境の改善を行う予定である。
以上の成果と改善点を得たことから、本年度はおおむね順調に進展していると報告した。

今後の研究の推進方策

2024年度では、生後8から10カ月の時点と生後18カ月の時点で、乳児の①身体の動きと②音声のデータ量を増やす予定である。その際、撮影環境(画角や解像度)や自由遊びの環境を改善する必要がある。つまり、次年度は、乳幼児の自発的な身体の動きと音声のデータの収集に向けて実験環境の改善に取り組む。また、乳幼児の養育者に対するアンケート調査を加えることで、身体の動きや音声に関する質的なデータを扱うことを検討している。さらに、今年度の研究2-1では、映像メディアによるダンスの長期的な視聴が乳幼児のリズム運動を引き起こすことを明らかにした。そのため、こうした実験手続きを用いて、「動きのリズム育成ダンス」の教育学的効果を脳活動と行動レベルから検討する予定である。

次年度使用額が生じた理由

研究計画では、データ解析用高性能コンピュータおよび姿勢推定解析ソフト(VisionPose Standard SDK, VisionPose)の購入を予定していた。しかし、乳児の身体の動きのデータは想定どおり収集することができたが、姿勢推定解析ソフトで解析するためには撮影環境(画角や解像度)を調整する必要があることが明らかになった。そのため、今年度はデータ解析用高性能コンピュータおよび姿勢推定解析ソフトを購入せず、動きのリズム譜を用いて解析を行った。その結果、物品費に大きな変更が生じた。
次年度、撮影環境を整えて、予定していたデータ解析用高性能コンピュータおよび姿勢推定解析ソフトを購入する予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 舞踊の美学 ダンス表現の分析手法としての「動きのリズム譜」の有効性2024

    • 著者名/発表者名
      山本絵里子
    • 雑誌名

      人間社会研究

      巻: 21 ページ: 103-108

  • [学会発表] デジタルネイティブ世代のメディア視聴とその影響:実生活環境下におけるテレビ視聴に関する発達神経科学的縦断研究2024

    • 著者名/発表者名
      山本絵里子
    • 学会等名
      日本発達心理学会第35回大会
  • [学会発表] Reward-related processing of familiar maternal speech in six-month-old infants with different likelihoods of ASD2023

    • 著者名/発表者名
      Hoshino, E., Hata, M., Xu, M., Yamamoto, E., Minagawa, Y.
    • 学会等名
      Society for the Neurobiology of Language 2023
    • 国際学会
  • [学会発表] Appearance of dancing in early development predicts language development.2023

    • 著者名/発表者名
      Yamamoto, E. Hata, M. Hoshino, E. & Minagawa, Y.
    • 学会等名
      Society for the Neurobiology of Language 2023
    • 国際学会
  • [学会発表] コロナ禍環境と乳幼児の「語りかけ」顔への視線特性:コロナ禍の育児ストレスからの考察2023

    • 著者名/発表者名
      秦政寛・徐鳴鏑・白野陽子・山本絵里子・皆川泰代
    • 学会等名
      日本赤ちゃん学会第23回学術集会
  • [学会発表] 目的指向運動における手と眼の運動制御微細運動と予期的追視に関する縦断的研究2023

    • 著者名/発表者名
      白野陽子・石川直樹・山本絵里子・秦政寛・阿部和大・皆川泰代
    • 学会等名
      日本赤ちゃん学会第23回学術集会
  • [学会発表] 認知発達におけるダンスの役割2023

    • 著者名/発表者名
      山本絵里子・秦政寛・星野英一・皆川泰代
    • 学会等名
      日本赤ちゃん学会第23回学術集会
  • [図書] 知覚・認知心理学入門2024

    • 著者名/発表者名
      芝田征司・山本絵里子
    • 総ページ数
      256
    • 出版者
      サイエンス社
    • ISBN
      9784781915814

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公開日: 2024-12-25  

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