研究課題/領域番号 |
23K10800
|
研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
寺西 仁志 大分大学, 医学部, 助教 (70727081)
|
研究分担者 |
花田 礼子 大分大学, 医学部, 教授 (00343707)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | ニューロメジンU / ペプチドホルモン / MASLD/MASH / 炎症 / 肥満関連疾患 |
研究実績の概要 |
近年、生活習慣病や肥満人口の増加に伴いMetabolic dysfunction-associated fatty liver disease(MASLD)およびmetabolic dysfunction-associated steatohepatitis(MASH)の増加が問題となっている。MASLDおよびMASHの発症には、肝臓への脂肪蓄積および酸化ストレスや炎症など様々な要因が関与し、長期経過により肝硬変や肝癌に進行することが明らかとなっている。本研究では、ニューロメジンU(NMU)がMASHの増悪因子としてどのように関与するのかを、GC-MS/MSを用いた網羅的メタボロミクス解析により明らかにする。また、NMUがMASHの診断マーカーとして有用であるかを検討し、臨床応用の可能性を追求する。 現在、NMUのELISAに用いる抗体を作製し終えた。また、NMUおよびNMU関連分子であるニューロメジンS(NMS)の両遺伝子欠損マウスを用いたMASLDおよびMASHモデルマウスを作製中である。今後は、NMUのELISA作製を行い、MASHモデルマウスやヒトMASH患者の血清を用いてNMUのMASH診断マーカーの可能性を検討する。 また、MASHモデルマウスの肝臓のメタボロミクス解析を行うことによりMASHの病態形成メカニズムの解析を行う。 さらに、NMU/NMS両遺伝子欠損マウスを用いた腎不全モデルマウスの作製およびその解析も行っており、血中の腎不全マーカーや腎臓での炎症および線維化に関わる分子のmRNA量、腎臓の形態変化の解析から、NMU関連分子が初期病態進行の抑制に関わることが示唆された。今後、2種類存在するNMU受容体の欠損マウスを用いて、腎臓におけるNMU関連分子がどの受容体を介して炎症惹起を行っているか調べ、その経路を解明する予定である。得られた知見は論文や学会で発表していく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニューロメジンU(NMU)のN末端およびC末端のウサギ抗体の作製が終了した。現在、NMU の MASLD/MASH 発症機序への関与を解明するため、MASH誘導食(コリン欠乏食;CDAA)を負荷した肝臓の炎症モデルマウス(MASHモデルマウス)作製を行っている。 また、NMUの炎症関連実験として、ニューロメジンU(NMU)およびニューロメジンS(NMS)の両遺伝子欠損マウス(dKOマウス)を用いた食事誘導性腎不全モデルマウスの作製およびその解析も行っており、血中の腎不全マーカーであるクレアチニンや尿素窒素(BUN)を測定した結果、dKOマウスでは初期病態進行が有意に抑制されることが確認された。さらに、腎臓での炎症および線維化に関わる分子のmRNA量の有意な変化や、腎臓の形態変化などに関しても同様の結果が得られており、NMUと腎不全の関わりが示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
肝臓の炎症に関しては、炎症関連物質であるニューロメジンU(NMU)およびニューロメジンS(NMS)の両遺伝子欠損マウスを用いて作製したMASHモデルマウスの肝臓をGC-MS/MSを使用した代謝産物の測定を行うメタボロミクスにて解析し、NMU関連分子の欠損がどの代謝に関連しているかを調べ、NMU のMASLD/MASH発症機序への関与を解明する予定である。さらに、mRNAやタンパク質の量的な変動を調べ、NMUのMASH増悪因子としての分子機序を明らかにする予定である。 また、作製した抗体を用いてNMUのELISAを作製し、NMUがMASHモデルマウスの血中にNMUが存在するかを調べ、MASHのバイオマーカーとなり得るかを検討する。 腎不全に関しては、データをまとめて論文投稿する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は抗体を作製し、その知見を元にELISA等を立上げ、プロトコールを作製するとともに、現在、作製した抗体の精度・特異性を解析中であるため、消耗品の購入が少なく抑えられ次年度の使用が生じた。 次年度ではメタボロミクスを行う予定であるため、繰り越しを含めた予算が必要となる計画である。
|