研究実績の概要 |
【目的】近年、高脂肪および高リンの摂取量が増え、一方ビタミンDの摂取量が不足し、問題視されている。また、ビタミンD栄養状態の指標である25(OH)D濃度の低値も指摘されている。しかしながらこれらの関係性については不明である。本研究は、食餌中の脂肪エネルギー比率およびリン含有量の違いがビタミンD栄養状態に及ぼす影響について検討することを目的とした。 【方法】8週齢の雄性SDラットを、通常食群 (Con群) 、高脂肪食群 (40%E: HF群) 、高脂肪高リン食群 (40%E, 1.2%: HFHP群) の3群に分け、3週間飼育し、出納試験、血中および尿中ビタミンD代謝動態と、肝臓および腎臓におけるビタミンD代謝関連遺伝子の発現について評価した。 【結果】血漿P濃度は各群間で差異は見られなかったが、HFHP群における尿中P排泄量は、Con群およびHF群に比して有意に高値を示した。HFHP群における血漿25(OH)D3、D2 濃度、血漿24,25(OH)2D3 濃度は、Con群およびHF群に比して有意に低値を示した。一方、HFHP群における尿中25(OH)D3 排泄量は、Con群に比して有意に高値を示した。肝臓における25位水酸化酵素であるCYP2R1およびCYP27A1のmRNA発現量および腎臓における24位水酸化酵素であるCYP24A1のmRNA発現量は、各群間で差異は見られなかった。一方、腎臓における1α位水酸化酵素であるCYP27B1のmRNA発現量はHFHP群において、HF群に比して高値傾向を示した。 【考察】高脂肪および高リンの組み合わせが複合的に作用し、腎臓での25(OH)D3の排泄が高まり、血中25(OH)D濃度の低下を引き起こしている可能性が考えられた。現在、その詳細機構について解明を進めている。
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