研究課題/領域番号 |
23K10877
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
吉村 健太郎 昭和大学, 歯学部, 講師 (10585699)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ケトジェニックダイエット / ケトン食 / 骨格成長 |
研究実績の概要 |
ケトジェニックダイエット(ケトン食)とは、低糖質・高脂質の食事を継続して摂取して生体内のケトン体産生を増加し血中ケトン体濃度を高く維持する食事療法のことである。ケトン食は、薬剤抵抗性を示す小児の難治性てんかんに対して発作を抑制することが報告されており、現在日本でも「てんかん食」として治療のための特別食に認められている。しかし、長期にわたって継続した場合、副作用として骨量減少・低身長などの骨の異常が出現することが報告されているが、その機序は未だ不明な点が多く残されている。本研究では、小児に対するケトジェニックダイエットの適用が骨格形成・成長に及ぼす影響について解析した。令和5年度は、軟骨細胞株ATDC5細胞を用いて実験を行った。体内で生成するケトン体であるアセト酢酸およびβ-ヒドロキシ酪酸を培地に添加しATDC5細胞を培養した。糖質を多く含む通常食を食べている健常人の場合、血中ケトン濃度は100μM程度であるが、てんかん予防のためのケトン食を摂取した場合は数mMまで上昇する。そこで、mM単位のアセト酢酸およびβ-ヒドロキシ酪酸を添加した。アセト酢酸は5mM以上で濃度依存的にATDC5細胞の増殖を抑制した。一方で、β-ヒドロキシ酪酸を添加した群では10mMの添加でもATDC5細胞の増殖に変化は生じなかった。これらの結果から、ケトジェニックダイエットで生体内に生じるケトン体の中で、アセト酢酸は軟骨細胞の増殖を抑制する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ケトン体が小児の骨格成長に及ぼす影響を解析するために、in vitroの実験系として軟骨細胞株ATDC5細胞にケトン体を添加して培養を行ったが、当初はex vivoの実験系としてマウス胎児から採取した大腿骨および脛骨を器官培養する系を計画していた。しかしながらマウス胎児からの大腿骨・脛骨の摘出が難しく、器官培養で成長が見られないという事態が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度はマウス胎児大腿骨・脛骨採取という技術的に困難な実験系を克服するため、生後1日齢や生後1週齢などのマウスから大腿骨・脛骨を採取し器官培養を行う。in vitroの細胞培養実験では細胞株のATDC5細胞のみならず、生後1日齢マウスの肋軟骨から採取した初代培養軟骨細胞を用いて実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウス胎児から大腿骨および脛骨を採取し器官培養を行うex vivoの実験系において、骨の採取および器官培養が技術的に困難であり、実際にケトン体を添加して器官培養から組織切片を作成し解析するところまで到達しなかったため、試薬や抗体、解析にかかる費用を次年度に繰り越した。現在、マウス胎児ではなく生後1日齢または1週齢での骨摘出を計画している。これにより若齢マウスの長官骨の器官培養法を確立し、次年度はケトン体存在下での大腿骨および脛骨の器官培養を行って組織切片を作成し、各種染色を施した成長板軟骨の形態を観察するために抗体および発色試薬などを購入する予定である。
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